がん免疫療法コラム

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新しいがんの診断方法 《リキッドバイオプシーとマイクロRNA》 

ここのところ、免疫に関わる話を取り上げてきましたので、少し趣向を変えて、今回は「がん」の診断方法についてスポットを当てたいと思います。この「がん」の診断方法は、「がん」研究のトピックの一つであり、その中でも「リキッドバイオプシー」という診断方法が注目を集めています。Vol.1011で取り上げた「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」でも検討課題とされ、その早期開発が期待されています。

◆リキッドバイオプシーとそのメリット

バイオプシーとは「生検」を意味し、人体から組織切片など採取して行う病理組織学的検査法のことを指します。「リキッドバイオプシー」とは血液などの体液を試料として病理組織学的検査を行い、「がん」の診断を行う方法のことです。

これまでの生検は組織を採取するため人体への侵襲(人体を傷つける)を伴いますが、この「リキッドバイオプシー」は少量の血液の採取で済みます。また、一度に複数のがんの診断が可能であることも大きなメリットです。

 

◆マイクロRNAを対象としたリキッドバイオプシー

リキッドバイオプシーの種類は、がんの存在を示すごく微量の血液中物質(バイオマーカー)によって変わります。現在、バイオマーカーの候補となる物質は大きく分けて、血中循環腫瘍DNAcirculating tumor DNA :以下、ctDNA)とマイクロRNA(以下、miRNA)の2種類あります。しかし、ctDNAは、その性質からある程度がんが大きくならないと検出できません。一方、miRNAはがん細胞が発生した初期の段階から血液中に放出されるため、がんが小さな状態でも検出することが可能です。

以下では、miRNAとそれを使ったリキッドバイオプシーについて見て行きます。

 

◆マイクロRNAとその意義

□マイクロRNAとは

miRNAは約22塩基の短い一本鎖のRNAであり、人間の体内には約2500種類のmiRNAが存在します。その多くは細胞質の中で遺伝子発現を調節しています。がんは遺伝子に傷がついて発現しますが、遺伝子が傷つけばmiRNAにも異常が生じます。このmiRNAの異常が、がんの発生に関与していると言われているため、がん発現の一つの指標として考えられています。実際に特定のmiRNAの増減が、がんを発生されることが分かってきており、肺がんではlet-7というmiRNAの発現の減少が認められる一方で、miR-17-92というmiRNAの発現の増加が認められます。

□マイクロRNAを用いる理由

miRNAは血液中に放出されるので、血液を調べることにより、がんの発現などの異常事態の発生を知ることが可能です。miRNAはそのまま血液に放出されると分解されてしまうので、エクソソームという細胞から分泌される風船の様な膜小胞の中に入って血液中に放出されます。従って、血液中のエクソソームを調べれば、どのようなmiRNAが分泌されているのかが分かります。がん細胞由来のものであれば、がんが発現した可能性を示しています。先述の通り、がん細胞発生の初期段階から放出されるので、がんの早期発見が可能です

□マイクロRNAを用いたリキッドバイオプシーの実用化

現在、13種類のがん(胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、肝がん、胆道がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、神経膠腫、肉腫)を同時に診断するシステムが開発中です。

また、尿中からがん患者特異的なmiRNAを検出する研究も進んでおり、将来的にはさらに簡便に検査を行える可能性があります。

 

以上のように、リキッドバイオプシーは従来の方法に比べて、侵襲が少なく、一度で多数のがんのスクリーニングが可能であり、さらには早期がんの発見も可能であることから、対象となる方や医療機関にとって大変有益と言えます。しかし、残念なことに昨年中にも実用化される予定とされてきましたが、少し時間がかかっているようです。

 

参考文献

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