がん免疫療法コラム

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サイトカインストーム Vol.68

サイトカインストーム Vol.68

サイトカインストーム という現象があります。

がんの進行によって生じる現象でもあり、最近話題の新型コロナウイルスの重症化とも関係しています。

今回はサイトカインストームについて解説します。

 

 

サイトカインとは?

サイトカインは、一般的には、細胞間相互作用に関わる低分子タンパク質です。細胞から放出され、他の細胞の機能や働きに影響を及ぼします。

サイトカインにはさまざまな種類があります(表1)。サイトカインとは特定の物質の名前ではなく、さまざまな物質の総称なのです。

表 1

Vol.45でも解説しましたが、サイトカインは、特に免疫細胞間の相互作用に大きく関わり、「がん」や「病原体」などとの戦いに役立っています。

いずれも1つの細胞から放出される量は極めて微量です。

ただ、働きかけを受けた細胞が、さらにサイトカインを放出して他の細胞に働きかけるため、多くの場合、非常に大きな結果をもたらします。

 

サイトカインストームとウイルス

1918〜1919年に流行したスペイン風邪では、死者の数は5千万〜1億人とされていますが、中でも健康な若者の死者が多かったとされています。

また、今回の新型コロナウイルス感染症では、ある段階で、快方に向かうケースと急速に重症化するケースに分かれると言われています。

こうした経過に関わっていると見られるのが、サイトカインストームです。

スペイン風邪の場合も、新型コロナウイルスの場合も、ウイルスそのものの感染より、サイトカインストームが重症化をもたらすと見られているのです。

 

サイトカインストームとは?

それでは、サイトカインストームとはどのような現象なのでしょうか?

実はサイトカインには、「炎症性サイトカイン」と「抗炎症性サイトカイン」があります。

これらはアクセルとブレーキの関係になっています。一方が炎症を引き起こし、他方がそれを抑えています。

通常は、両者のバランスが取れており、不都合が起きないように制御されています。ところが、このアクセルとブレーキのバランスが崩れることがあります。

前述のように、サイトカインは微量でも大きな結果をもたらします。この結果、炎症性サイトカインが過剰に血中に放出されて自己免疫疾患などを引き起こしてしまうことになるのです。

これがサイトカインストームです。

 

サイトカインストームの症状と対策

サイトカインストームは、がんではがん悪液質の原因となっていると考えられています。これはVol.26でも解説したように、がん特有の体重減少などをもたらします。

がん悪液質では、代謝異常も伴っており、浮腫、胸水・腹水などが発生します。

新型コロナウイルスでは、間質性肺炎が起こることが知られています。これは肺でガス交換(血液中に酸素を取り込み二酸化炭素を排出する)を担当する肺胞と肺胞の間の部分(間質)や肺胞の壁、血管壁などで炎症が起こる現象で、サイトカインストームがその原因として関わっていると見られています。

こうしたがん悪液質や重度の間質性肺炎の治療は非常に困難です。ただ、炎症性サイトカインの量を低減するさまざまな手法に効果が期待されています。

 

 

参考文献

 

独立行政法人 科学技術振興機構ホームページ, アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術,  免疫系におけるサイトカインの役割 https://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html

村田興, サイトカインと疾患, 長崎大学 薬学部 平成13年度 長崎大学公開講座「くすりの科学」http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/openseminar/data/pharma/010913.pdf

公益社団法人 日本薬学会ホームページ, サイトカイン https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3

実験医学別冊 もっとよくわかる!免疫学, 河本宏, 羊土社

平野俊夫、村上正晃 https://www.qst.go.jp/site/press/40364.htm

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