がん免疫療法コラム

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腹膜播種に対する新しい治療、腹膜化学療法とは? Vol.55

「腹膜播種」という言葉を聞いたことがありますか。一部の悪性腫瘍からしか起こらない病状であり、当事者やそのご家族以外では、なかなか耳にする機会は少ないかもしれません。しかし、胃がんや大腸癌など、日本人に多い悪性腫瘍に伴い発生する、少なくない病状です。

この腹膜播種に対する新しい治療法に注目が集まっています。

■腹膜播種とは?

人の腹部には、腹膜と呼ばれる膜が袋状になっていて、その中に胃や大腸などの臓器が入っています。これら袋の中にある臓器のことを総称して腹腔内臓器と呼びます。

内臓の内側に悪性腫瘍ができた場合、腫瘍が少しずつ臓器を侵食し、外側に飛び出してしまうことがあります。これが腹腔内臓器で起きると、飛び出した腫瘍細胞が飛び散り、腹膜のいろいろな場所に付着します。これが腹膜播種と呼ばれる状態です。

一度腹膜播種の状態になってしまうと、完全に回復することは現代医療では難しいと言われています。

 

なぜ腹膜播種は治療が難しいのか

腹膜播種は、腹膜の広い範囲に細かな腫瘍細胞が点々と広がった状態です。胃がんや大腸癌など、どこかの臓器内に腫瘍細胞が固まっている場合はその部分を切除することが可能ですが、腹膜播種の場合、その範囲が広すぎて、手術で切除することができません。

抗癌剤の静脈内投与などで病状がやや抑えられることがわかっており、これまでの治療の中心は化学療法でした。

 

全く新しい治療法、腹膜化学療法とは

近年、腹膜播種に対する新しい治療法として、腹膜化学療法に注目が集まっています。

腹膜化学療法は、これまで静脈を通して投与していた抗癌剤を直接腹膜に投与する治療です。腹部にポートと呼ばれる小さな機械を埋め込み、そのポートを利用して、抗癌剤を腹腔へ直接投与します。抗癌剤が直接腹膜に触れて効果を発揮するため、これまでの化学療法よりも高い効果が期待できます。

 

実際、従来の化学療法と腹膜化学療法の比較研究において、従来の化学療法の奏功率が53%、腹膜化学療法の総効率が60%と優位に差が見られたとの論文も発表されています。また、国内のデータとして、腹膜化学療法の奏功率71%という高い結果も出ています。一般的に腹膜播種に対する抗癌剤の静脈内投与では奏功率50-60%といわれていますから、これは高い数値です。

ただし、腹膜化学療法はまだ臨床に導入されてから日が浅く、症例数も少ないため、これらの数値がそのまま効果であると判断することはできません。また、副作用や他臓器への影響など、どのようなリスクがあるか完全にはわかっていない部分もあり、導入を希望する場合は慎重に検討する必要があります。

 

腹膜化学療法は保険適用治療ではないため、医療費も高額になります。現在、胃がんや膵臓がんなど6つの疾患に対し、5種類の腹膜化学療法が先進医療に指定されており、該当する場合は制度を利用することができますが、それでも先進医療に関わる部分の医療費は全額自費負担となります。

本当に自分の病態に適しているのか、主治医やかかりつけ医としっかりと相談の上検討する必要があります。

 

 

(参考文献)

  1. 関東労災病院, 腹膜内化学療法についてhttps://www.kantoh.johas.go.jp/tabid/605/Default.aspx
  2. 草津総合病院, 腹膜播種センター
    https://www.kusatsu-gh.or.jp/ghk/departments/digestive_1/scholar
  3. 厚生労働省ホームページ, 先進医療の各技術の概要https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html
  4. 腹膜播種を有する胃癌患者に対するPaclitaxelの腹腔内・経静脈投与とS-1の併用療法vs. S-1とCisplatinの併用療法の第III相比較試験:PHOENIX-GC試験
    http://www.gi-cancer.net/gi/ronbun/archives/201809-02.html
  5. 第27回高度医療評価会議資料https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001r1a4-att/2r9852000001r1hc.pdf
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