がん免疫療法コラム

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「免疫細胞」と「ストレス」と「自律神経」の話 Vol.13

昨今、免疫に対する注目度は上がってきており、書籍や雑誌などで免疫を上げることの効用などが取り上げられることもしばしばです。その際に免疫の邪魔をする悪者として登場するのは、ストレスではないでしょうか。このストレスが免疫を下げるという話は良く聞きます。では、なぜストレスが免疫を下げるか、今回は免疫と自律神経の関係からその理由について見ていきたいと思います。

 

■交感神経優位が顆粒球を増やす

自律神経には交感神経と副交感神経があります。活動時には交感神経が、休息時には副交感神経が活発になります。交感神経が優位の状態では、白血球の一部である好中球、好酸球、好塩基球といった顆粒球が増加することが確かめられています1)。また、急にストレスが加わった場合や交感神経から分泌される神経刺激伝達物質であるノルアドレナリンを直接投与した場合にも、末梢の血液における好中球数の増加が確認されています2

 

■顆粒球の増加による影響

顆粒球は異物を貪食し、自らが発生させた活性酸素によってそれを殺します。しかし、活性酸素は増えすぎると色々と悪い影響を与えます。その一つとして、がんの発生・転移・再発に大きく係わっていることが知られています。また、顆粒球はサイトカインを産生し、過剰に産生された場合には組織を障害することや、さらには過剰な顆粒球(=好中球)はリンパ球の働きを抑制すると言われています3

 

■交感神経優位がリンパ球を抑制する

ノルアドレナリンを直接投与すると末梢の血液におけるリンパ球の数が減少することが確かめられています2)また、慢性的なストレスによる交感神経系の持続的な興奮がリンパ球の動きを制限し(リンパ節からの脱出を抑制)、さらに樹状細胞の抗原提示能やサイトカイン産生能の低下によるT細胞の活性化を阻害する可能性が指摘されています4

 

■ストレスとがん

以上からストレスは交感神経が興奮させ、その興奮が続いた場合、顆粒球による活性酸素やサイトカインの産生が活発となり、リンパ球の働きを抑制します。つまり、慢性的なストレスを感じている場合とは、がんが発生しやすい状態であり、かつ免疫が低下することにより、その発生や増殖をアシストしているような状態が維持されるということです。

国立がん研究センターが行った研究により、自覚的にストレスレベルが高いグループは、常に自覚的ストレスレベルが低いグループに比べ、がんに罹患するリスクが11%上昇し、統計的に有意であることが示されました5)

 

この結果の全てが交感神経の興奮によるものとは言い切れませんが、ストレスとがん化の関係が明らかになって来ているのは事実です。ストレスが免疫系を含む身体に及ぼす影響は思っている以上に深刻であり、ストレスへの対処について真剣に考えるべき時に来ています。

 

参考文献

  1. 安保徹, 免疫革命, 2003
  2. Benschop, R. J. et al., Brain Behav. Immun., 10, 77-91, 1996 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8811932
  3. 田渕崇文 東京医科大学雑誌, 57(1), 15-22, 1999
  4. 鈴木一博, 領域融合レビュー, 4, e011, 2015 DOI: 10.7875/leading.author.4.e011
  5. Song H, et al., Scientific Reports 7(1),  Oct 2017 DOI: 10.1038/s41598-017-13362-8
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