がん免疫療法コラム

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サイトカインの多様性と治療への応用  

前回、サイトカインの基本的な働きについて確認しました。いくつかのサイトカインはその働きから医薬品として用いられています。今回は、そのサイトカインが医薬品としてどのように応用されているのかを見て行きたいと思います。

サイトカインの医薬品への応用例として「サイトカイン療法」と「抗サイトカイン療法」の2つの種類があります。前者はサイトカインによる作用を薬効としている治療法ですが、後者は逆にサイトカインの作用が原因となって発症している疾患を対象としており、サイトカインの作用をブロックすることで治療効果を発揮するという治療法です。考え方として相反していますが、それにはサイトカインの持つ多様性が関係しています。

■サイトカイン療法とは

「サイトカイン療法」とは、精製および組み換え技術を用いて製造されたサイトカインを用いて、がんやC型肝炎などのウイルス性肝炎を治療する免疫療法のことです。現在までにインターロイキン2(以下、IL-2)とインターフェロン(以下、INF) [INFα、βおよびγ]が承認されています。

IL-2はT細胞から産生され、T細胞やNK細胞の増殖や活性化を誘導する因子として発見されました。血管肉腫や胃がんに適応が取得されています。

INFはウイルスの増殖を抑制する物質として発見され、免疫細胞のみならず、血管内皮細胞など多くの細胞から産生されることが知られています。ウイルスに対する効果だけではなく、「がん」に対する直接的な効果や免疫細胞を介した抗腫瘍効果が認められています。
現在では、腎がん、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、膠芽腫、髄芽腫などに適応が取得されています。

サイトカインの弱点として、その作用が強力であることが挙げられます。局所だけに使うことができれば良いのですが、それが難しく、全身にまで行きわたってしまうため副作用が起きてしまいます。そのため、現在ではサイトカインそのものを薬剤として使用している例は限られています。

■抗サイトカイン療法とは

「抗サイトカイン療法」とは、先述の通り、サイトカインの作用をブロックすることで効果を発揮する治療法のことです。サイトカインのブロックには「抗体」を用いており、この「抗体」がサイトカインの作用を無力化します。

サイトカインは自己免疫疾患と関連しており、その代表例である関節リウマチには炎症性サイトカインが深く関わっています。炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(以下、TNF)やインターロイキン1(以下、IL-1)およびインターロイキン6(以下、IL-6)は、リウマチの炎症に関わるサイトカインの誘導を介して関節の腫れや骨の破壊に直接関与していることが分かっています。その中でもTNF-αが中心的な関りを持っていることから、このTNF-αを阻害する抗TNF-α抗体による治療法が確立されました。その他にもIL-1阻害剤やIL-6阻害剤も関節リウマチに適応を取得しています。

このように自己免疫疾患に対して「抗サイトカイン療法」は効果を認められています。しかし、「がん」に関してはサイトカインが増殖を促進するという報告もありますが、治療薬として応用された例はありません。

 

サイトカインには様々な作用があり、ある病気を抑制したり、促進したりします。その作用の仕方によって、今回見て来た「サイトカイン療法」や「抗サイトカイン療法」のように、サイトカインを直接用いたり、またはその働きをブロックすることで病気の治療に利用されています。

 

参考文献

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