がん免疫療法コラム

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パラダイムシフト 加速する「がんゲノム医療」への取り組み!《Part.2》 

前回、キイトルーダの臓器横断的な適応拡大と遺伝子パネル検査システムの承認が国の政策の一環であることをお話しました。今回は、その国の政策によってがんゲノム医療がどのように進み、そして今後どのように変わっていくのかについて見て行きたいと思います。まずは、がんゲノム医療の推進役として機能してきた「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」についてご説明します。

■がんゲノム医療推進コンソーシアム

がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会とは、2017年に厚生労働省主催で開かれた会議の名称です。目的は「がん撲滅」であり、そのためにがんゲノム医療をいち早く国民に届け、さらに革新的な治療法の開発や遺伝子情報などのデータの蓄積をするための仕組みに関して検討が行われました。また、実施医療機関やがんゲノム医療情報の集約・保管・利活用推進機関等の機能や役割についても方向性を打ち出しました1)

昨年には上記懇談会でまとめられた方針を受けて「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」が発足し、機能や役割が理念に沿ったものであるかの確認や各事業の進捗などについて話し合いが持たれています。

■がんゲノム医療の進捗

がんゲノム医療の進み具合として、実施医療機関やゲノム医療情報を取り扱う機関などのハード面と診断と治療などのソフト面に分けて見ていきましょう。まずは、ハード面からです。

ハードに関して

ハード面においては医療および情報収集体制の構築がそれに当たります。昨年2月には、全国11カ所のがんゲノム医療中核拠点病院が指定され、その中核拠点病院と連携する全国100カ所のがんゲノム医療連携病院が公表されました2)。現在11カ所ある中核拠点の病院に、さらに30カ所程度を追加し、合計約40カ所にする計画が進められています。

また、昨年6月には「がんゲノム情報管理センター」がゲノム医療の情報を集約・保管を目的として国立研究開発法人国立がん研究センターに開設されました。

ソフトに関して

<がん遺伝子パネル検査の早期承認>

がんゲノム医療は遺伝子変異を明らかにすることが最初のステップになります。そこで今回、遺伝子変異を調べる「がん遺伝子パネル検査」が2種類申請され、一つは「先駆け審査」、もう一つは「迅速審査」の対象になり、同時に承認されました。現在、この検査が保険診療で受けられるように進められています。また、遺伝子検査から得られたゲノム情報を新薬の創出を始め、治療の最適化・予後予測・発症予防などがんゲノム医療の発展のために、如何に役立てるかが今後の課題です。

<キイトルーダにみる臓器横断的な承認>

医薬品の開発においては2つの方法が考えられています。一つは革新的新薬の創出、もう一つはゲノムの変異情報に着目した既存薬の適応拡大です。今回のキイトルーダのケースは後者に該当します。ゲノム情報に基づいて臓器横断的に承認の取得を認めることより、患者さんの医薬品へのアクセスがより早期に実現していくよう進められた結果、先の承認に至りました。これは世界的な潮流であり、今後も分子標的薬を含め免疫チェックポイント阻害薬の開発や適応拡大は競って行われると思われ、注視すべきポイントです。

このように昨年はがんゲノム医療にとって大きな動きがありました。実質的ながんゲノム医療元年と言っても良いかも知れません。今後は指定された拠点病院ががんゲノム医療を実施する主体となり、遺伝子パネル検査を基にした医療が保険適応の範囲内で受けることができるようになります。少なくともその方向で進められています。本年を含めここ何年かでさらなるがんゲノム医療の推進が期待されることから、その動向は注目に値します。

 

参考文献

  1. 厚生労働省, がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会報告書, 2017 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000169236.pdf
  2. 厚生労働省, がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療連携病院の一覧表  (平成 30 10月1日現在) 

Vol.11

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