がん免疫療法コラム

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パラダイムシフト 加速する「がんゲノム医療」への取り組み!《Part.1》 Vol.10

厚生労働省は昨年12月21日付で「マイクロサテライト不安定性(MSI)」が高い頻度で起きているがん患者に対し、がん免疫チェックポイント阻害剤である「キイトルーダ」をがんが発現した臓器を問わず、臓器横断的に使用することを承認しました1)。MSIとは遺細胞が分裂する際に遺伝情報の複製ミスが起き、それを修復する機能が低下している状態を言います。従来は、肺がん、胃がん、大腸がんなど臓器ごとに承認されてきましたが、今回はMSIというバイオマーカーの結果に基づいて薬剤の使用を認めるという形で承認されました。「キイトルーダ」自体は既に承認された薬であり、今回は適応の拡大ですが、このような形での承認の取得は本邦初であり、画期的なことです

また、同12月にはがんゲノム医療用の遺伝子パネル検査システムが、これも本邦で初めて承認されました2),3)。遺伝子パネル検査システムとは1回の検査で遺伝子を複数個について調べることができる検査システムのことで、この検査結果に基づいて遺伝子に合う薬剤が選ばれます。同時に2種類の遺伝子パネル検査システムが承認され、一つが「先駆け審査」、もう一つが迅速審査の対象になっていました。

この2つの事象に共通しているのは遺伝子という点ですが、実は国のある政策によって承認に至ったのです。今回と次回の2回に分けて、その国の政策とは何なのか、そして国が考えるがん治療のあり方について見て行きたいと思います。

■がんゲノム医療とは

がんゲノム医療という言葉はご存じでしょうか。ゲノムとは体をつくるための設計図のようなもので、がんゲノム医療とは、がん組織の中の多数の遺伝子を調べることにより遺伝子変異を明らかにし、一人一人の患者さんの状態に合わせて治療などを行う医療のことです。

■国の施策としての承認

では、そのがんゲノム医療と冒頭に記載した薬剤と医療機器の承認にはどのような関係があるのでしょうか。

世界的に現在のがんの薬物治療は分子標的薬が中心になってきており、がんに関連する遺伝子の変異を見つけ、それをマーカーとして患者さんに使用する薬物が選択されるという時代になってきました。今やがんは遺伝子異常の病気として認識が改められ、がん治療に対するパラダイムシフトが起きていると言っても過言ではありません。しかし、本邦は欧米に比べ、この点で出遅れてしまっていると言われています。これを挽回すべく、国が音頭を取り「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」および「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」を立ち上げ、そこでがんゲノム医療に関する話し合いが行われてきました。その中に今回承認された事項も含まれていました。つまりは冒頭の薬剤と医療機器の承認は予め国が計画していたものであり、それが実現したということなのです。

昨年はこれらの承認の他にも計画されたものが実現されています。次回はこれらの会議ではどのような話が行われ、今後、何が行われようとしているのかについてご説明したいと思います。

参考文献

  1. 日刊薬業, 「キイトルーダ」の適応追加など3件を承認 厚労省, 2018年12月21日 https://nk.jiho.jp/article/138505
  2. 国立研究開発法人 国立がん研究センター, プレスリリース, 20181226日 https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/1226_03/20181226_pressrelease.pdf
  3. 中外製薬株式会社, ニュースリリース, 2018年12月27日 https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20181227163001_802.html

Vol.10

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