がん免疫療法コラム

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疲れたT細胞を元気に! 【免疫チェックポイント阻害剤の効果】 Vol.40

前回、T細胞の「疲弊」について見て来ましたが、その「疲弊」には「免疫チェックポイント」が関連していることを同時に説明しました。がん組織内の刺激による「免疫チェックポイント」の発現が、「疲弊」の主な原因になっていました。従って、「免疫チェックポイント」の働きを阻害すればT細胞の「疲弊」も抑えられるはずです。そこで、今回はその「免疫チェックポイント」の働きとともにその阻害効果を確認しながら、「がん微小環境」において「免疫チェックポイント」を阻害する意義について見て行きたいと思います。
「免疫チェックポイント」の働きには、「全身性の免疫ブレーキ」と「局所性の免疫ブレーキ」の2つに分けられます。まずは、それぞれを順番に見て行きましょう。

■免疫チェックポイントの免疫抑制とその阻害剤

◆全身性の免疫ブレーキ

全身性の免疫ブレーキには「細胞傷害性Tリンパ球抗原4(以下、CTLA-4)」が関わっており、ブレーキをかけているポイントが2つあります。一つはT細胞に「CTLA-4」が発現して、T細胞の活性化を抑制する経路です。そして、もう一つは免疫抑制細胞である制御性T細胞(以下、Treg)に「CTLA-4」が発現し、Tregを介してT細胞を間接的に抑制する経路です。

ここで大切なのは、この「CTLA-4」は全身のT細胞に発現しているという点です。つまり、この「CTLA-4」を抑制する「抗CTLA-4抗体」は、全身の免疫抑制においても効果を発揮することを意味しています。

◆局所性の免疫ブレーキ

局所性の免疫ブレーキには「Programmed cell death 1(以下、PD-1)」が関わっており、「CTLA-4」と同様にT細胞とTregに発現しています。しかし、「PD-1」が結合する先の「PD-1リガンド(以下、PD-L)」が「がん細胞」の表面にも発現していることから、がん微小環境ではT細胞の「PD-1」と「がん細胞」の「PD-L1」が結合することにより、T細胞が抑制状態に陥っているものと考えられています。

つまり、この結合を阻止すればT細胞を抑制状態から解放できるはずです。実際に、この結合を阻止する「抗PD-1/PD-L1抗体」は、この局所における免疫ブレーキを解除する目的で使われています。

 

■T細胞の疲弊回復とがん免疫サイクルの再活性

以上のように「免疫チェックポイント」によって免疫にブレーキがかけられた結果、「がん免疫サイクル」(Vol.29)がストップしてしまっている可能性が指摘されています。しかし、そこに「免疫チェックポイント阻害剤」を使ってブレーキを解除することで、一旦止められた「がん免疫サイクル」を再活性化することができると考えられています。

「がん免疫編集」(Vol.2930)の構図で言えば、「がん」の増殖が盛んに行われている「逃避相」から、その前段階である「平衡相」あるいは「排除相」まで戻すことが可能なのです。これは動物実験だけではなく、臨床的にも示されています。

つまり、がん組織内でT細胞に対するブレーキを解除して「疲弊状態」から回復させる意義とは、がん組織内での状態を変えて、T細胞の「がん」に対する攻撃を再開させることにあるのです。しかし、それだけではなく、「がん」が「逃避相」に移行してしまった状態では、うまく効果を発揮できない、あるいは効果が抑制されてしまうような他の抗がん剤の作用をも促すことが可能であることを意味しています。

現在、「免疫チェックポイント阻害剤」と他の薬剤との併用が盛んに試みられていますが、このような効果を期待して行われています。

 

以上のように免疫のブレーキを解除することで「T細胞」が元気を取り戻し、「がん」への攻撃を再開させることが可能です。これは非常に大きなことです。なぜなら「がん免疫療法」の目標は、T細胞のような攻撃力のある「免疫細胞」を生かすことにあるからです。T細胞を「疲弊」の状態から救い出し、そして活躍してもらうことは、まさにそれに当てはまります。
しかし、免疫のブレーキはまだ多数あり、未知のものもありそうです。今後もブレーキの解除機構を含む免疫の抑制機構に対する知見を集積し、「がん免疫編集」全体に対する理解を深化させていく一層の試みが求められています。

 

参考文献

  • 鵜殿平一郎, 免疫チェックポイント制御とがん免疫治療, 岡山医学会雑誌 第125巻 pp. 13-18, April 2013 http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/4/49379/20160528094829644248/125_13.pdf
  • 実験医学増刊 がん免疫療法 腫瘍免疫学の最新知見から治療法のアップデートまで, Vol.34 No.12, p81-86, 2016
  • 実験医学増刊 がんは免疫系をいかに抑制するか,Vol.36 No.9, p1445-1451, 2018
  • 実験医学増刊 がんは免疫系をいかに抑制するか,Vol.36 No.9, p1452-1456, 2018
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