がん免疫療法コラム

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「がん免疫編集」という考え方 【免疫による「がん」の排除】  《Part.2》 Vol.29

前回ご紹介した「がん免疫編集」は「排除相」、「平衡相」そして「逃避相」の3段階に分かれています。「排除相」の一部は、すでに本コラムでご紹介した内容も含まれていますが、そこは復習も兼ねて見て行きましょう。
「排除相」では、免疫が「がん細胞」を撃退する過程を示しています。その中心は免疫の「自然免疫」と「獲得免疫」であり、特に「獲得免疫」では「がん免疫サイクル」の働きにより、効率良く「がん」が「排除」されます。

■免疫の役割

最初に生体に現れた「がん細胞」は免疫原性(免疫を誘導する力)が高いため、「免疫」によって異物と判断され、「排除機構」により排除されます。この「排除機構」には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります(図1)。

◇「自然免疫」

自然免疫の主役は、マクロファージ、好中球、樹状細胞などの貪食細胞とリンパ球の一つであるナチュラルキラー細胞(NK細胞)です。これらの免疫細胞は異物が体内に入ってきた際に、それが病原体なのか、そうでないのかを見分けるセンサー役を担うレセプターを持っています。NK細胞は常にパトロールを行いながら、隠れている「がん」を巧みに見つけ出して排除します。NK細胞で対処しきれない場合は、自然免疫全体が働き、それに続いて獲得免疫も働き始めます。この自然免疫と獲得免疫のつなぎ役を樹状細胞が担っています。

◇「獲得免疫」

獲得免疫系で中心的な役割を果たすのがリンパ球で、T細胞とB細胞に分かれます。樹状細胞がT細胞であるキラーT細胞、ヘルパーT細胞を活性化します。そして、活性化された活性化型ヘルパーT細胞は抗体の産生を役割とするB細胞を活性化します。B細胞によって産生さ入れた抗体は「がん」が持つ「がん抗原」などに特異的に結合して「がん」を「排除」します。このような緻密な連携により獲得免疫全体が始動します。

図1 自然免疫と獲得免疫による防御機構

 

さらに図1下部に示したように、樹状細胞によりキラーT細胞が活性化され、これが「がん細胞」を排除するためのシステムである「がん免疫サイクル」につながります。

以下は、本コラムのVol.21で取り上げた内容とほぼ同じです。
がん免疫が機能しているということは、「がん」に対する免疫応答、つまり「がん免疫サイクル」が回り続けることを意味し、その結果としてキラーT細胞が活性化されます。このサイクルは以下の7ステップに分けられています(図2)。①「がん細胞」から「がん抗原」が放出され、②その「がん抗原」を樹状細胞が捕獲して、T細胞に提示します。③この樹状細胞の抗原提示によってキラーT細胞がプライミング(免疫系を賦活するための予備刺激)および活性化されます。次に、④活性化されたキラーT細胞は「がん」へと遊走し、⑤「がん」へ入り込みます(浸潤)。⑥そこで「がん細胞」の存在を認識し、⑦アポトーシス(プログラムされた細胞死)の誘導などにより「がん細胞」を破壊します。
これが一連のサイクルであり、このような過程を通して「がん細胞」が排除されます。

また、この「がん免疫サイクル」が機能している環境下では、インターフェロンγ(INFγ)やIL-12、腫瘍壊死因子α(TNFα)などのサイトカインが分泌され、貪食細胞やリンパ球などの免疫細胞を分化、増殖および活性化させます。つまり、自然免疫系により活性化された獲得免疫系が、逆に自然免疫系を活性化します。自然免疫系と獲得免疫系は双方向に影響を与える関係と言えます。

                    図2 がん免疫サイクル

 

次回は「平衡相」そして「逃避相」の2段階をまとめて見て行く予定です。

 

参考文献

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