がん免疫療法コラム

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T細胞が疲れちゃう❓ 【がん微小環境内のT細胞】  Vol.39

がん微小環境下において「がん」を死滅させる一番手の「免疫細胞」は、何といっても「T細胞」です。しかし、その「T細胞」も時に機能が落ちてしまう事があります。特に「がん組織」内に潜り込んだ「T細胞」の実に半分以上が本来の機能を失っていると言われています。このような機能が失われた状態を「疲弊」と呼んでおり、「がん免疫療法」の効果を減弱させる要因になっています。今回は、この「疲弊」をテーマとし、がん微小環境下で「免疫細胞」がどのような状況に置かれているのかについて見て行きたいと思います。
この「疲弊」には「免疫疲弊」と呼ばれるものと、もう1つ「代謝疲弊」と呼ばれるものがあります。まず、「免疫疲弊」から見て行きましょう。

◆免疫疲弊

「T細胞」は「がん組織」に潜り込み、そこで刺激を受けて活性化します。しかし、刺激を受けるのは一度だけではなく、何度となく刺激を受けることになります。そして刺激を受けているうちに、「T細胞」の機能が低下してくることが知られています。これを「免疫疲弊」と呼び、一度この状態に陥ると自力での回復が難しいと言われています。
具体的には、「がん」を攻撃して殺すTNF-αやIFN-γを産生する能力や「T細胞」の増殖および活性化を行うインターロイキン-2(IL-2)の産生能力が低下していることが報告されています。

「免疫疲弊」を起こした「T細胞」をよく観察してみると、ある物質が発現していることがわかりました。このある物質は「疲弊分子」と呼ばれ、「T細胞」を「疲弊」させる元凶となっています。実はこの「疲弊分子」の代表が、あの「免疫チェックポイント分子」なのです。刺激を受けるごとに「免疫チェックポイント分子」が発現し、PD-1であればPD-L1およびPD-L2に、CTLA-4であればCD80[B7-1]/ CD86にそれぞれ結合します。また、PD-1やCTLA-4の他にも、Tim-3、LAG-3やNr4aという転写因子が「免疫疲弊」を引き起こすと言われています。
そして「T細胞」の機能が段階的に低下し、アポトーシス(細胞死)へと導かれ、最終的には排除されてしまいます。

◆代謝疲弊

「がん組織」は、グルコース、アミノ酸や脂質などの代謝系を積極的に変化させて、正常な細胞とは異なる特殊な環境を作り出していると考えられています。Vol.31では「がん微小環境」下では「低グルコース」「低pH」「低酸素」状態に、Vol.38 では「アミノ酸」が低下している状態にあることをお伝えしました。そこでは「T細胞」が必要とする栄養を「がん」に奪われてしまうことや、エネルギーを作り出す「ミトコンドリア」の機能の低下も認められています。こうして「T細胞」は必要なエネルギーを確保することができず、「代謝疲弊」という状態に陥ります。「がん組織」という適地へ乗り込むまでは良いのですが、その後に兵糧攻めにあってしまい、文字通り「疲弊」状態になってしまうのです。

 

「免疫疲弊」には免疫チェックポイント分子が関与していますので、免疫チェックポイント分子阻害剤が有効です。また、この「代謝疲弊」には、「疲弊分子」であるPD-1とPD-L1の結合も関わっており、解糖系の代謝を妨げているとも言われています。従って、ここでも免疫チェックポイント分子阻害による効果が期待できます。これに加え、「代謝疲弊」に陥っている「T細胞」では「ミトコンドリア」の機能が低下しているとお話しましたが、この「ミトコンドリア」を活性化する方法も研究されています。今後は、「免疫細胞」の「疲弊」については、免疫チェックポイント阻害剤と共に「ミトコンドリア」の機能を改善するなど「代謝」の活性化が「がん治療」に寄与するのではないかと考えられており、研究の進展が期待されています。

 

参考文献

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