がん免疫療法コラム

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確定診断に向けて診断テストを用いる Vol.25


◆陽性的中度を高めるには

前回は、陽性的中率をどうすれば高くできるのかという話で終わりました。
陽性的中率の式は、
「結果が陽性の人の内、がんかかって「いる」人)/結果が陽性の人=A/A+B」
で表せ、「A」は十分に大きいので、分母の「B」を小さくするにはどうしたら良いのかという話になりました。「B」は「偽陽性」の人数を示していますので、「偽陽性」となる人数を減らせば良いことになります。

「偽陽性」の人数「B」を特異度(D/B+D)を使って表すと、「偽陽性率=1-特異度(D/B+D)」なので、
「B」=(1-特異度(D/B+D))×(がんにかかって「いない」人 (B+D))
で表せます(表1参照)。

 

表1 偽陽性率の算出

◇特異度との関係
この値を小さくするには、分子の(1-特異度)を小さく、つまり特異度を大きくするか、分母の「がんにかかって「いない」人を少なくするか、その両方を行うかのいずれかです。特異度を小さくする方法は前々回でやりました(Vol.23)。病気を有して「いる」人の検査値の分布と病気を有して「いない」人の検査値の分布が離れるよう、つまり差が開くように検査のパワーを上げる、検査のバラツキなくすよう精度を上げる、またはその両方を成立させるかのいずれかでした。

◇有病率との関係
では、がんにかかって「いない」人を少なくするには、どうすれば良いのでしょうか?
その答えは有病率を上げることです。ある集団の中で有病率が高い、つまりがんにかかって「いる」人が増えれば、相対的にある集団の中ではがんにかかって「いない」人の割合は減ります。有病率を上げた場合に(0.01%→100%)、陽性的中率がどのように変化するかのシミュレーションを行ったものが図1です。また、特異度を0.89から0.99に上げた場合のシミュレーションも加えてありますので(図1青線)、同時に見て行きましょう。


図1 有病率および特異度による陽性的中率の変化

 

有病率が上がるほど陽性的中率も上がります。そして、特異度が上がるとグラフが左側にシフトします。有病率が同じでも特異度が上がれば陽性的中率も上がります。例えば、特異度が0.89で有病率が1%の場合では陽性的中率は約8.3%ですが、同じ有病率で特異度が0.99の場合には陽性的中率は50%になります。有病率、特異度の両方が大きく陽性的中率に影響を及ぼしていることに、実感を持っていただけたのではないでしょうか。

 

◆有病率を高めるには

では、有病率を上げるにはどうしたら良いのでしょうか?冗談でも病気の人を増やすなど考えられませんので、集団を絞り有病率を高めるという方法を採ることになります。前回、健診の陽性的中率は0.1~0.2とお伝えしましたが、ここからさらに上げる必要があります。健診の他に、病院などで検査を行って集団を絞り込み、相対的に有病率を高めた後、最後に確定診断として検査を行えば良いということになります。図1の特異度0.89のグラフ(赤線)を見ると、有病率1%から50%の間で急激に陽性的中率(約8%→約90%)が上昇します。

 

◆特異度と有病率の合わせ技

ここで、仮に陽性的中度を99%を超える値にまで上げとすると、有病率を95%まで高めないといけない計算になります。しかし、有病率50%の状態で特異度を0.99まで上げることができれば(青線の有病率50%)、陽性的中率は99%になります。このように有病率を極度に上げなくても、特異度を高めることにより陽性的中率は向上します。

 

ここまで「確定診断に用いる診断テストとはどういったものか」をテーマにしてきました。その回答としては、感度が高い検査が前提となり(高い陽性的中率が得られる)、特異度も可能な限り高い検査(偽陽性を減らす)である必要があります。また、有病率が低いと陽性的中率が低くなってしまうため、有病率が予め高いと分かっている集団に対して用いる必要があります。
感度や特異度の高い検査の重要性は直観的に理解できると思いますが、健診のような形態ではなく、目的に合う適切な集団に対して検査を行うことの重要性を同時にご理解いただけたと思います。

尚、リキッドバイオプシーに関しましては例示として使わせていただいており、確定診断に用いられるかについては承知しておりませんが、がんの発症リスクの高い人や再発リスクが高い患者さんに対してなど、かなり対象を絞った形での使用が検討されているようです。

 

参考文献

  • m3.com 臨床ダイジェスト, 癌の「発症時期」、リキッドバイオプシーで予測へ【時流◆癌治療のこれから】2018年12月6日, https://www.m3.com/clinical/news/645892
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