がん免疫療法コラム

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光免疫療法はがん免疫療法の新たな光となりうるか? 《Part.2》 

前回に引き続き、光免疫療法について見て行きましょう。今回は光免疫療法が免疫療法と称している所以と、前回お伝え出来なかった作用メカニズムをまとめてみたいと思います。


がん細胞の破壊

前回ご説明しましたが、「抗体」に「IR700」を結合させたものを静脈から体内に注入すると、がん細胞の表面の抗原に「抗体」が付着します。がん細胞の表面には抗原が多数発現しているので、複数の抗体ががん細胞の表面に付着します。そして「光」の照射によって「IR700」が変形し、それに伴い抗体も変形または凝集します。これらの変化により細胞膜の機能が失われ、1~2分という極めて短い時間でがん細胞が破壊されます。光の当たった箇所のがん細胞だけが、風船がはじけるように破裂していく様子が顕微鏡下で観察されています。

抗がん剤には細胞障害性を示す様々な種類の薬剤があるので、意外に思われるかもしれませんが、このような物理的な方法で、外側からがん細胞を破壊するものは今までありませんでした。

 

がん細胞破壊後の「がん抗原」の放出

上記のように物理的な破壊が行われると、がん細胞の中から「がん抗原」と呼ばれるがん特有の物質が放出されます。これが樹状細胞に届くと樹状細胞がそのがんの特徴を覚え、他の免疫細胞に知らせることにより免疫が活性化されます。つまり、がん細胞の破壊による「がん抗原」の放出によって、免疫活性化のスイッチが入るのです。この免疫の活性化こそが、光免疫療法の免疫療法たる所以なのです。しかし、この点は、がんペプチドワクチン(Vol.17)と同様に「偶然の成り行き」に任されています。

 

制御性T細胞の破壊によるブレーキ解除

また、光免疫療には免疫の活性化のための作戦がもう一つあります。それは免疫の抑制役となっている制御性T細胞を破壊して、免疫を活性化させようとする試みです。以前、Vol.1で免疫の要であるリンパ球を活性化させる方法として、アクセルとブレーキの解除があることを説明しました。この制御性T細胞はブレーキの役割をしているので、制御性T細胞の破壊はブレーキの解除を意味します。

制御性T細胞の表面にも抗原がありますので、その抗原に結合する「抗体」に「IR700」をくっ付けたものを体内に投与します。あとは、光の照射によりがん細胞と同様のメカニズムで細胞が破壊されます。がん細胞を破壊するだけでは、その作用は限定的で、局所にのみに留まってしまう可能性がありますが、この制御性T細胞を破壊する方法を組み合わせることによって、相乗的な効果や転移のあるがんに対しても効果が期待できます。

余談ですが、制御性T細胞は大阪大学特任教授の坂口志文氏が発見した免疫細胞であり、坂口氏はノーベル賞の有力候補と目されています。折を見て、本コラムで取り上げたいと思っています。

(参考文献については最後にまとめて提示します)

 

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