がん免疫療法コラム

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マクロファージを活性化!《新しい免疫チェックポイント阻害剤の開発》 

オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬についてはVol.2で取り上げましたが、今回は異なるメカニズムも持った新しい免疫チェックポイント阻害剤をご紹介します。

がん細胞とマクロファージの間には免疫チェックポイント、つまり免疫の働きを抑制するブレーキが存在します。そのブレーキを解除する働きを持つ薬剤が、悪性リンパ腫患者に対して強力かつ持続的な効果を示したとする結果が報告され1),2)、新たな免疫チェックポイント阻害剤の臨床応用への可能性が示唆されました。この報告を交えながら、同時にマクロファージの働きについても見て行きたいと思います。

 

■マクロファージの働き

マクロファージは白血球の一種で、侵入した異物を見つけ、飲み込んで消化します(貪食作用)。また、異物などが体内に侵入したことをヘルパーT細胞に伝える獲得免疫への橋し渡し役になるなど自然免疫を司ります。さらに同じ異物に出会った時に効果的に異物を排除する獲得免疫も備えています。つまり、マクロファージは自然免疫と獲得免疫の両方を併せ持つ非常に有能な免疫細胞なのです。従って、マクロファージを活性化できればその意義はとても大きいと言えます。

 

■マクロファージの免疫チェックポイントとその阻害薬

次にマクロファージの免疫チェックポイント、つまりマクロファージの働きを抑制するメカニズムについて見ていきましょう。

マクロファージに発現しているSIRPαというタンパク質とがん細胞に発現しているCD47というタンパク質が結合する(手を結ぶ)と、マクロファージの貪食作用が抑制されます3)。この抑制機構が免疫チェックポイントとして知られています。そこでCD47SIRPαの結合を阻害する抗体(抗CD47抗体)をがん患者さんに使ってみたところ抗腫瘍効果が確認され、冒頭で紹介した内容の報告が行われました。

オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬は主にT細胞の働きを抑制する機構を解除することにより効果を発揮しますが、新しい免疫チェックポイント阻害薬(抗CD47抗体)はマクロファージの貪食作用を抑制する機構の解除を標的としており、この点で異なります。

 CD47とSIRPαとの結合がマクロファージの貧食作用を抑制する

報告の中でCD47は膵管腺がんがん幹細胞にも高発現していることやマウスに発現した固形がんにおいてCD47阻害の有効性が示唆されていることから、血液がんだけでなく、固形がんでもマクロファージ免疫チェックポイント阻害薬が治療薬となる可能性があると言及しています。

さらにマクロファージ免疫チェックポイントの解除に伴い、自然免疫である貪食作用だけではなくT細胞依存性の抗腫瘍効果、つまり獲得免疫が活性化されている可能性も考えられます。まだ臨床においては初期の開発段階にありますが、今後の展開に期待がもてる有望な薬剤が出てきました。

 

【7月14日追記】
7月11日、小野薬品は米Forty Seven社が開発を進める抗CD47抗体である「5F9」について、日本、韓国、台湾、ASEAN諸国での独占的開発、商業化する契約を締結したと発表しました。今後実施されるグローバル試験に参画する権利も保有しており、自然免疫系を利用した新たながん免疫療法の開発が本邦でも始まります。

参考文献

1)   Alberto Mantovani and Dan L. Longo: N Engl J Med, November 1, 379, 1777-1779, 2018 

2) Ranjana Advani et al: N Engl J Med, 379, 1711-1721, 2018

3)  Tadahiko Yanagita et al: JCI Insight, 2(1):e89140, 2017  https://www.researchgate.net/publication/312339724_Anti-SIRPa_antibodies_as_a_potential_new_tool_for_cancer_immunotherapy

 

Vol.9

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