がん免疫療法コラム

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がん免疫療法_多発性骨髄腫CAR-T#2

前回に続いて、国内でも製造販売承認を取得した多発性骨髄腫に対するCAR-T療法について述べます。

 

BCMA CAR-T開発の経緯

多発性骨髄腫に対するCAR-T療法の最初の報告は2013年米国からで、この時からすでに標的はBCMAで、全奏効率は85%、完全奏効率も45%と非常に良好な成績でした。さらに特筆すべきは、微小残存病変 (minimum residual disease: MRD)も測定できないくらいに改善した患者さんが多かったことです(測定した16例では全患者さんがMRD陰性に該当)。

CAR-T療法独特の副作用として、サイトカイン放出症候群や神経系事象が挙げられますが、これらも他疾患へのCAR-Tと比較して特に問題になるレベルではありませんでした。2020年に報告された長期成績では、無増悪生存期間中央値は9.0か月、全生存期間中央値は34.2か月でした。

この有望な結果を踏まえて行われた第II相臨床試験の結果が2021年に報告されました。対象は、プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、モノクローナル抗体すべての治療歴のある患者さんで、既存の治療方法ではなかなか難しいと考えられる方々です。しかしそのような中でも全奏効率は73%で、MRD陰性にまで至った患者さんも26%いました。無増悪生存期間中央値は8.8か月、全生存期間中央値は19.4か月でした。サイトカイン放出症候群は84%で起きましたが、重篤なものは5.5%でした。

また、細かな解析では、70歳以上の高齢者でも同等の成績であることなども示されています。

 

多発性骨髄腫に対するCAR-T療法の未来

このようにすでに多くの治療薬を使用している患者さんに対しても優れた治療効果を示すCAR-T療法ですが、時間の経過とともに多くの患者さんが再発することもわかってきています。

理由の1つとして、骨髄腫細胞に発現しているBCMAの量が低下してくることが挙げられています。この状況を克服するためには、BCMAへより強く結合するCAR-Tの開発や、BCMAの発現をより高める薬剤の開発、BCMA以外にもう1つターゲットをもったCAR-Tの開発などが挙げられます。

また、患者さんから得られるリンパ球のタイプにより有効性が異なるという報告もあり、特にメモリーT細胞が多く含まれる場合、CAR-T療法の有効性が高いそうです。

 

多発性骨髄腫に対するCAR-T療法は近々、国内でも実診療で用いられることになるでしょう。最初はリンパ腫などと同じように他の治療が効果なくなってしまった患者さんに用いられると思いますが、いずれはもっと診断から早い時期に用いられるようになるかもしれません。

多発性骨髄腫が治る時代は来るのか――CAR-T療法の今後に期待です。

 

[参考資料]

Raje N et al., Anti-BCMA CAR T-Cell Therapy bb2121 in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma. N Engl J Med. 2019 May 2;380(18):1726-1737.

Munshi N et al., Idecabtagene Vicleucel in Relapsed and Refractory Multiple Myeloma., N Engl J Med. 2021 Feb 25;384(8):705-716.

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