がん免疫療法コラム

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Vol.152 がん免疫療法に伴う大腸炎の治療 -糞便移植治療(FMT)

ICI性大腸炎とは

従来の抗がん剤と異なるメカニズムをもつICIですが、一部の患者において免疫が関連した深刻な副作用(Immune-related Adverse Effect : irAE)が生じることが新たに報告されています。

 

大腸炎は最も高頻度に起こるirAEであり、重度な大腸炎では治療が中断されることもあります。ICI誘発性大腸炎の治療には、副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制剤が使用されますが、免疫抑制剤には重大な副作用があるため、ICI誘発性大腸炎の最適な管理とは言えません。

 

大腸炎と腸内細菌の関係性

腸内細菌叢とICIの治療効果との関係性は、vol.138(がん免疫と腸内細菌)でも述べられていますが、ICI誘発性大腸炎とも腸内細菌叢が関与している可能性が報告されています。

 

ICI誘発性大腸炎を発症した場合には、その炎症に伴い腸内細菌叢が変化することが知られています。

腸内細菌叢はクローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患(IBD)の発症に関わり、一方で腸内細菌叢の正常化はこれらの大腸炎の治療とも密接に関わっています。例えば、最近の臨床試験では、炎症性腸疾患などの大腸炎において、乱れた状態となった腸内細菌叢を整えることで、治療が成功する可能性が報告されています。

 

腸内細菌叢を正常化するための方法として、糞便移植療法(Fecal Transplantation Therapy : FMT)が注目されています。FMTとは、正常な人の糞便中に含まれる腸内細菌叢をドナーとして、患者に移植することで、腸内細菌叢の正常化を図る方法です。

 

FMTとICI誘発性大腸炎       

実際に、ICI誘発性大腸炎に対しFMTによる治療を試みた臨床試験があります。ICIによる治療を受けた後に大腸炎を発症した2人の患者に、健康なドナーの糞便中の細菌叢を移植しました。抗炎症剤や免疫抑制剤を使用しても症状の改善が見られなかった2人ですが、FMTによる治療後では、大腸炎の症状は完全に消失し、最終的には出血もなく通常の排便に戻りました。

また、移植後の患者の菌叢は、健康なドナーの腸内細菌叢に似た構成を示し、大腸を保護するように働く細菌が復活して大腸炎の改善につながったことがわかりました。

 

この試験では、FMTによる腸内細菌叢の正常化がICI誘発性大腸炎に有効である可能性が示されました。

ICIががんの種類を問わず適応が拡大し、多くの人に使用されていくことを考えると、ICIに関連する大腸炎の発症率は増加することが予想されます。

FMTがICI誘発性大腸炎に最適な治療法として確立されるためにも、今後より多くの患者さんを対象とした臨床試験が期待されます。

 

(参考資料)

Wang Y et al. Fecal microbiota transplantation for refractory immune checkpoint inhibitor-associated colitis. Nat Med. 2018 Dec;24(12):1804-1808.

Hayase E et al. Role of the intestinal microbiome and microbial-derived metabolites in immune checkpoint blockade immunotherapy of cancer. Genome Med. 2021 Jun 23;13(1):107.

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