がん免疫療法コラム

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Vol.142 がん免疫_光免疫療法#3

 

 前回に引き続いて光免疫療法について述べます。今回は、他のがんなどへの応用の現状について概説します。

 

他のがんにも応用

また日本では2019年より食道がんと胃がんに対して内視鏡治療としての光免疫療法の臨床試験が開始されています。食道がんは、頭頚部扁平上皮がんと同様EGFRを発現していて、同様の効果が期待されています。従来の治療では根治出来ない患者さんを対象として臨床試験が行われています。さらに、食道がん・胃がんを対象として、光免疫療法と免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブを併用した第Ib/II臨床試験も開始しています。胃がんでも25-65%程度の患者さんではEGFRは発現しており、それを確認できた患者さんのみが対象となっています。免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせることによって、抗腫瘍免疫効果が持続化し、相乗効果が期待されています。

 

膵がんにも有効な可能性

今後、光免疫療法はさらなる発展が期待されています。理論的には、抗体や光感受性物質を入れ替えることによって他のがんへの応用が可能です。また、従来の治療と組み合わせることによってさらなる相乗効果が期待されています。さらには、手術中に用いることによって、深い病変であっても直接照射できるため、深部のがんにも効果が得られる可能性があります。まだマウスの実験レベルではありますが、膵がんのマウスに対して、手術中に光免疫療法を併用することで、手術だけよりも有意に術後の再発が減ったことが示されました。

また、光免疫療法のターゲットとしてがんではなく正常細胞を標的とする方法も考えられています。実はがん細胞の周囲に散らばっている「制御性T細胞」と呼ばれるリンパ球は、がん免疫を強く抑制してしまう方向に働くことが知られています。つまり、がんを攻撃するにはマイナスの方向に働くのです。そこでこの制御性T細胞に発現しているCD25という分子をターゲットとした光免疫療法を行うことによって、この細胞を破壊し、がん細胞周囲の免疫を活性化する試みが検討されています。まだこれもマウスの実験レベルではありますが、その理論が実証されており、今後臨床への応用が期待されています。

この治療法は、日本人研究者が開発し、現在国内の企業が強力に支援をして、推し進めています。最初は使用できるがんは限られるかもしれませんが、工夫次第では、幅広いがん種に使用できることが期待でき、今後さらなる研究の発展と臨床試験の進行が注目されます。

 

[参考資料]

Kadota T et al., A phase Ib study of near infrared photoimmunotherapy(NIR-PIT) using ASP-1929 in combination with nivolumab and for patients with advanced gastric or esophageal cancer(GE-PIT study,EPOCI901).J CIin Oncol.2020138(4 Suppl):abstrTPS457.

Maawy AA et al., Photoimmunotherapy lowers recurrence after pancreatic cancer surgery in orthotopic nude mouse models. J Surg Res. 2015 Jul;197(1):5-11.

Sato K et al., Spatially selective depletion of tumor-associated regulatory T cells with near-infrared photoimmunotherapy. Sci Transl Med. 2016 Aug 17;8(352):352ra110.

 

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