がん免疫療法コラム

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Vol.98 がん免疫療法における先進的なバイオマテリアルおよびドラッグデリバリーシステムについて④

・概要
前回の記事では、がん免疫療法におけるポリマー系バイオマテリアルについて説明してきました。今回の記事では、ハイドロゲルバイオマテリアルについて説明します。

 

・ハイドロゲルに関して
ハイドロゲルは、ゲル化特性があるため抗原を貯蔵しておくための空洞として機能することができ、サイトカイン、タンパク質、DNAなどの生体分子を大量に取り込むためのベクターとして使用されています。

アルギン酸微粒子ベースの注射用ゲルは約10年前に報告され、成熟DC及びケモカインCCL 21及びCCL 19の同時送達に用いられています。この系では、宿主の樹状細胞を注射部位に動員し、同時に局所リンパ節に移動することが可能であり、これにより免疫応答を開始させる継続的な過程を提供することが示されています。また、mPEG-PLGAハイドロゲルを送達するGM-CSFを注入し、続いて抗原負荷ベクターを投与することにより、APCの動員と抗原提示を実現する二段階戦略がデザインされ、明らかな抗腫瘍免疫療法の可能性が示されています。コレステリルプルランにより形成されたナノゲル粒子は、髄質マクロファージへの抗原の送達及び交差提示の良好な機能を示し、また、このワクチンはToll様受容体作動薬の助けを借りて腫瘍の増殖を有意に遅らせることができることが明らかにされました。ヒアルロン酸-チラミン系ハイドロゲルは、IFN-αを注射部位に送達し、腫瘍増殖を抑制するために用いられています。

ホスファターゼ酵素によって形成されるハイドロゲルは、液性免疫応答及び細胞性免疫応答の誘発能が高く、蛋白質ワクチンアジュバントとして使用できることが示されました。さらに、非常に簡単なプロセスで形成されたペプチドNap-GFFYハイドロゲルは、強力なCD 8+T細胞免疫応答も引き起こすことが証明されています。ALGを多価カチオンで架橋結合させた併用システムを設計し、局所腫瘍部位に標識カタラーゼを同時投与してゼリー化した後、CTLA-4を全身投与したところ、局所腫瘍増殖及び転移を遅延させたことが明らかになりました。

DNAベースの超分子ハイドロゲルは、高濃度のCpGを放出することによってAPCsを動員し、活性化することが報告されており、これは腫瘍免疫療法の有望な方法として役立つ可能性があるとされています。また、抗原及びアジュバントの制御放出を実現し、抗原の持続性を促進し、癌に対する細胞傷害性Tリンパ球免疫応答を増強するための提示を促進する、 TCL, TLR 3アゴニスト、ポリ(I:C)を共封入するためのポリL-バリンハイドロゲルも作成されています。その他、JQ-1(BRD 4阻害薬)とICGを導入した腫瘍細胞を封入し、腫瘍透過性ペプチド系ハイドロゲルが作成され、強力な患者特異的免疫反応を誘発し、癌の再発を予防することができたとされています。このようにして、様々な種類のハイドロゲルが作成され、その特性に応じた物質が封入され、抗がん作用を発揮することが示されています。しかしながら、動物実験の枠を出られていない結果も多く、今後の研究開発の進展が望まれています。次回は、本テーマの最後として、無機、その他のバイオマテリアルについて紹介します。

 

・参考文献
1. Acta Pharmacol Sin. 2020 Jul; 41(7): 911–927.
2. Nat Rev Drug Discov. 2019 Mar; 18(3): 175–196.
3. 膜(MEMBRANE),34(6),328­335(2009)
4. Drug Delivery System 28― 3, 2013
5. J Biomed Nanotechnol. 2018;14:98–113.
6. Biomaterials. 2018;164:80–97.
7. 森北出版「化学辞典(第2版)」
8. 第 103 回 日本病理学会総会 宿題報告(平成 26 年度日本病理学賞)「マクロファージの活性化と病態」

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