がん免疫療法コラム

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がんを引き起こす原因となる主なウイルス5つご紹介

がんを引き起こすウイルス(1) Vol.70

がんは、風邪やその他の感染症とことなり、うつる病気ではありません。ただ、要因の一つとして、感染が原因で発生することもあります。細菌が原因となることもありますが(下記関連記事参照 )、比較的多いのはウイルスが原因のがんです。

そこで今回は、がんを引き起こす原因となるウイルスについて説明していきます。

がんの原因となる5つのウイルスについて


がんの原因となるウイルスは、数多く存在しますが、中でも代表的なものとして、以下のウイルスが知られています。

・EBウイルス (Epstein-Barr virus; EPV)

EBウイルスに感染すると、悪性リンパ腫、上咽喉癌、平滑筋肉腫、唾液腺癌などが引き起こされる可能性があります。EBウイルスは、もともと「キス病」として知られる単純疱疹ウイルスの一つです。感染の初期段階では、高熱やのどの痛みなどの症状が出ることが多いですが、その後、体内に潜伏し、特定の条件下でがんを引き起こすことがあります。

・ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus type; HPV)

HPVは子宮頸がんの主な原因とされています。このウイルスは性的接触を通じて広がるため、性的活動を持つ者が感染リスクを持つとされます。多くの人が生涯で一度は感染すると言われており、多くの場合は自己免疫により無害化されますが、まれに慢性化し、子宮頸がんを引き起こすことがあります。

・B型肝炎ウイルス (Hepatitis B virus; HBV) & C型肝炎ウイルス (Hepatitis C virus; HCV)

これらのウイルスは肝細胞がんの原因となります。特に、慢性肝炎や肝硬変を経て、肝細胞がんを発症するケースが多いです。HBVは主に血液を介して感染し、HCVは主に注射針や血液製剤を通じて感染します。

・ヒトTリンパ好性ウイルス1型 (HTLV-1)

HTLV-1は成人T細胞白血病の原因となるもので、母乳、血液、性的接触を通じて感染します。特に、日本の四国地方やカリブ海地域での感染者が多いとされています。

これらのウイルスには、DNAウイルスやレトロウイルスが多く見られます。特に、EPV、HPV、HBVはDNAウイルスに分類され、HTLV-1はレトロウイルスに分類されます。これらのウイルスは、感染者のDNAに変更を加え、がんの原因となることが知られています。

DNAウイルス、レトロウイルスとは?


がんの原因となるウイルスには、DNAウイルスやレトロウイルスが主に関係しています。これらのウイルスは、人体の遺伝情報を狙い、細胞の成長や分裂の制御を乱すことでがん化を引き起こします。具体的には、ウイルスのDNAやRNAが宿主のDNAと組み合わさり、細胞の異常な成長を促すことがあります。

DNAウイルスは、ウイルスの遺伝情報がDNA上に乗っているウイルスを指します。ヒトを始めとする多くの生物では、遺伝情報はDNA上に保持されています。この理由は、DNAが化学的に安定であるため、遺伝情報を確実に保存する上でRNAよりもDNAの方が都合が良いからです。

しかし、生体内で酵素やその他のタンパク質を合成する際、DNAの情報は直接利用されるのではなく、まず、DNAの情報がRNAに転写されます。この点から、RNAだけでも情報として機能することが理解できます。

これとは対照的に、RNAウイルスは、遺伝情報をRNAとして持っています。ここで特筆すべきは、レトロウイルスです。レトロウイルスはRNAウイルスの一種であり、RNAの遺伝情報をDNAに転写し、それを宿主細胞のDNAに組み込む特性を持っています。一般的に遺伝情報はDNAからRNAへと転写される流れですが、レトロウイルスはこの流れを逆にするため、「レトロ」と名付けられています。

なぜ「がんウイルス」にはDNAウイルスやレトロウイルスが多いのか?


がんは、私たちの体の細胞が異常に増殖を続ける病気です。正常な状態では、細胞は古くなったり損傷したりすると自然に死んでいきますが、何らかの原因で細胞の増殖や死の制御が乱れると、細胞がコントロールを失って増え続けることでがんとなります。この異常な増殖を引き起こす要因は様々で、紫外線やタバコの煙、ある種の化学物質などが考えられます。そして、その一因としてウイルスの役割が注目されています。

ウイルスががんを引き起こすメカニズムにはいくつかのタイプがありますが、ウイルスは基本的に細胞の中で増殖をします。特に、DNAウイルスは感染した細胞の核内で、一方、レトロウイルスは感染した細胞のDNAを介して増殖します。増殖を助けるため、ウイルスは宿主の細胞の増殖制御に干渉します。実際、ウイルスが効率よく増殖するためには、細胞のDNAが活発に複製される状態が好都合となります。その結果、細胞の増殖制御に異常が生じ、がんへと進行することがあります。この仕組みにより、DNAウイルスやレトロウイルスの中にはがんを引き起こす能力を持ったものが存在するのです。

まとめ


がんウイルスは、感染した細胞内で自己増殖することなく、安定的に潜伏感染・慢性感染を継続することもあります。また、最近、話題のコロナウイルスやインフルエンザウイルスは通常のRNAウイルスであり、がんを引き起こすことはないと考えられます。つまり、ウイルスに感染してもがんになるケースは限られています。それでもがんの1割以上がウイルス感染と関係しています。

次回はウイルスとがんとの関係をもう少し深く考えてみたいと思います。

 

参考文献

国立がん研究センター 「がんの発生要因」(2019年7月24日)

https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/factor.html

日経メディカル「インタビュー◎ウイルスの構造とその意味」(2020年3月30日)

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202003/564951.html

 

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