がん免疫療法コラム

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がんを引き起こす細菌 Vol.64

がんを引き起こす細菌 Vol.64

 

■ピロリ菌とは?

細菌が引き起こすがんとして有名なのがピロリ菌による胃がんです。

ピロリ菌は4μmほどの長さの細長い細菌です。細菌は通常1~10 μmほどの大きさですから大きさは普通です。

学名は「ヘリコバクター・ピロリ」と言いますが、ヘリコは「らせん形の」という意味。バクターはバクテリア、つまり、細菌。また、胃の出口である幽門(ゆうもん、pylorus)付近に多くいることからピロリという種名が付いています。

らせん形と言っても、細長い形を何回かねじったかたちをイメージしていただけるとよいでしょう。

 

■胃に対するピロリ菌の作用

ピロリ菌がいる胃の内部は胃酸により非常に酸性の強い状態です。しかし、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を分泌することで自分の周囲にアンモニアを発生させ胃の中で生きています。アンモニアはアルカリ性なため胃酸を中和する作用があります。

ピロリ菌感染が長く続くと、胃粘膜の損傷や修復が繰り返されて萎縮性胃炎になります。

萎縮性胃炎では、胃酸を分泌する組織が縮小し、胃の粘膜が不均一に薄くなります。このため、粘膜下の血管が透けて見える状態になります(血管透見像:けっかんとうけんぞう)。また、胃の粘膜が腸の粘膜のようになる現象(腸上皮化生:ちょうじょうひかせい)が起こります。

かつて、腸上皮化生は、炎症刺激の繰り返しに対する胃粘膜の適応現象とも考えられていました。しかし、その後の研究により、腸上皮化生は、分子生物学的変化であることがわかりました。

具体的には、腸上皮化生部位では、胃の細胞は、幹細胞様の状態に一度リセットされているのです。幹細胞様の状態とは、消化管のいろいろな細胞を作る能力のある状態に戻ることです。そして、本来、胃の細胞であるにも関わらず、腸の細胞へと異常分化する結果、腸上皮化生が起こるという流れです。

 

■腸上皮化生部位とがんとの関係

腸上皮化生は胃がんの発生と密接な関係を持っていると考えられます。ただ、がんの周辺に存在する傍がん病変である可能性もあります。もっとも、最近では、少なくとも分化型がんの中には腸上皮化生を経由する経路があるという見方が強くなっています。

なお、ピロリ菌除菌が胃がん発生のリスクを減少させることは確かですが、ピロリ菌除菌は100%成功するとは限りませんし、それで胃がん発生のリスクがゼロになるわけではありません。ピロリ菌除菌を行った場合もその後の経過を注意深く見ることが重要だと言えるでしょう。

 

参考文献

  1. 上堂文也、神崎洋光、石原立「胃の腸上皮化生の内視鏡診断」日本消化器内視鏡学会雑誌 56(6), 1941-1952, 2014
  2. 滝澤登一郎『胃の病理形態学』医学書院 (2003/11/1)
  3. 小林正明「除菌後胃癌 の特徴と診断のポイント」https://www.med.niigata-u.ac.jp/in3/sunship/img/gc.pdf(2020年3月15日閲覧)
  4. 日本消化器がん検診学会「血液による胃がんリスク評価(いわゆる「ABC分類」)を受けられた方へのご注意」http://www.jsgcs.or.jp/citizens/citizens_news/stomach_cancer

 

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