がん免疫療法コラム

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「自律神経」と「がん」の密接な関係が明らかに! 《Part.2》 Vol.36

前回、「自律神経」と「がん」の関係について「ネイチャーニューロサイエンス」に発表された論文を基に見て来ました。同論文では「自律神経」と「免疫」の関係についても報告していますので、続いて見て行きましょう。

◆「自律神経」と「免疫」の関係

論文中に、「自律神経」と「免疫チェックポイント分子」と「サイトカイン」の発現との関係について記載されています。
「免疫チェックポイント分子(PD-1、PD-L1およびFOXP3)*」は免疫のブレーキ機構であり、免疫を抑制する方向に働きます。
また、「サイトカイン」の検討には「IFN-γ」というタンパク質を用いています。「IFN-γ」は「免疫」のアクセル的な役割を担い、「がん細胞」などの増殖を抑制します。

結論から言いますと、「交感神経」は「免疫チェックポイント分子」の発現を増やし、逆に「副交感神経」は減らすことがわかりました。また、「交感神経」は「サイトカイン」の発現を減らし、逆に「副交感神経」は増やしました。つまり、「交感神経」は「免疫」を抑制し、「副交感神経」は「免疫」を活性化する可能性が示唆されました。
図式としては、「交感神経↑」→「免疫↓」および「副交感神経↑」→「免疫↑」の関係となります。

「自律神経」と「免疫」との関係は色々と調べられていますが、今回の論文では「がん組織内の微小環境(Vol.31参照)」においてこのような関係が示されたことが新しい点です。
これは《Part.1》で見た「自律神経」と「がん」の関係においても同様のことが言えます。

◆関係性の整理

ここで「交感神経↑」→「免疫↓」の関係を、《Part.1》で示した「ストレス↑」→「交感神経↑」→「がん↑」の中に組み入れると、以下の図式になります。

  • 「ストレス↑」→「交感神経↑」→「免疫↓」→「がん↑」

 

また、「リラックス↑」→「副交感神経↑」→「がん↓」に「副交感神経↑」→「免疫↑」の関係を組み入れると、以下の図式になります。

  • 「リラックス↑」→「副交感神経↑」→「免疫↑」→「がん↓」

◆今後の展開への期待

「免疫」に関しては調べられている因子は限られており、それをもって「免疫」と大きなワクで囲うのは現時点では少し誇張しすぎているかも知れません。また、論文の最後に「自律神経」が「免疫」にどのようなメカニズムで影響を与えているのかの詳細は不明である旨、記載されています。「交感神経↑」→「免疫↓」→「がん↑」の関係は成り立つと思いますが、その仕組みやどの程度の相関があるのかなどは今後の課題と言えるでしょう。詳細は徐々に明らかになって行くと思うので期待しましょう。

さらに、本論文では「自律神経を操作する神経医療(遺伝子治療など)が、がんの新規治療戦略になる可能性」についても指摘しています。知見が増え、基礎的な事柄への理解が深まることへの期待と併せ、治療といった臨床応用に関しても大いに期待したいと思います。

 

今回の論文では乳がんに関して調べられた結果なので、必ずしも全ての「がん」で同じような結果が得られるとは限りません。この点は今後の研究に委ねられるべきところですが、「自律神経」が「がん」に対し影響を及ぼしているというエビデンスが得られたことは大きなことです。「ストレスを減らし、リラックスを心がけましょう」という言い回しは至るところで耳にしますが、このようなエビデンスが加わるとまた違って聞こえるのではないでしょうか。

 

PD-1:細胞傷害性T細胞の表面に発現する免疫チェックポイント受容体
PD-L1: PD-1に特異的に結合する
FOXP3:制御性T細胞のマスター転写因子。制御性T細胞の発生・分化と免疫抑制機能などをコントロールする

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