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ステージ4の胃がんになった場合の治療法とは? 薬物療法や免疫療法について解説
がんは罹患した部位によってさまざまな治療法が検討されます。ステージ4の胃がんになった場合の治療法には、どのような方法があるのでしょうか。
今回は胃がんと診断された方や、胃がん患者さんの親族の方に向けて、薬物療法や免疫療法について解説します。ぜひ参考にご覧ください。
INDEX
胃がんとは?
まずは胃がんの概要について紹介します。
胃は、みぞおちのあたりに位置する袋状の臓器です。胃の主な役割は、知っての通り食べ物を消化し、少しずつ腸に送り出すことです。胃へと送られた食べ物は、消化酵素や胃酸を含む胃液と混ざることによって消化されます。
そして消化された食べ物は、幽門を通り少しずつ十二指腸へ送り出されます。
胃がんとは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞ががん細胞となり、増殖していくことにより発生します。がんが進行することで、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側へと進んでいきます。
さらに、がんが進行すると漿膜の外側まで達してしまいます。その結果、大腸、膵臓、横隔膜、肝臓などにも浸潤します。がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って移動することにより、別の臓器へと転移が起こる可能性もあります。
胃がんの中には、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていくスキルス胃がんもあります。スキルス胃がんは進行が早いという特徴があります。症状が生じた際には進行していることが多く、治りにくいと言われています。
胃がんの症状
続いては、胃がんの症状を紹介します。
胃がんになると、初期段階では自覚症状がないケースが多いと言われています。人によっては軽度の胃部不快感や胸やけ、げっぷ、食欲不振、吐き気などの症状がある場合もあります。
がんが進行すると以下に挙げるような症状が出るケースが多いです。
- 食欲不振
- お腹が張る
- 痛みが生じる
- 血を吐く
- 便に血が混じる
- 黒い便が出る
また、さらに進行すると以下の症状が出ることもあります。
- 体重減少や衰弱が強くなる
- 腹水がたまる
- お腹全体に広がって腹膜播種になる
- 他の臓器に転移する
胃がんのステージ
胃がんは、大きく4つのステージ(病期)に分けられます。
- Ⅱ期(ステージ2)
- Ⅲ期(ステージ3)
- Ⅳ期(ステージ4)
ステージは以下の3つの要素(TNM分類)から成り立っています。
- T:胃壁のどの層までがんが進行しているのか(がんの深達度)
- N:胃の周囲にあるリンパ節へ転移しているのか
- M:がんができた場所から離れたリンパ節や臓器に転移しているのか
ステージ1のがんは早期がん、ステージ4のがんは末期がんと呼ばれることが多いです。
また、胃がんの治療方針を決めるためのステージとして、臨床分類と病理分類の2つの分類があります。次章以降で詳細を見ていきましょう。
臨床分類
胃がんの治療方針を決めるためのステージには、臨床分類があります。臨床分類は、胃がんが発覚し最初に治療方針を決めるときに使用されます。画像診断、生検、審査腹腔鏡などの結果に基づいてがんの広がりを「推定」するための分類で、「予想ステージ」とも言えます。
胃がんの臨床分類は以下の通りです。
遠隔転移 | なし(M0) | あり(M1) | |
なし(N0) | あり(N+) | 有無にかかわらず | |
T1a/T1b、T2 | Ⅰ | ⅡA | ⅣB |
T3、T4a | ⅡB | Ⅲ | |
T4b | ⅣA |
(参考:がん情報サービス 胃がん 治療)
臨床分類によるステージ4の胃がんでは、がんが胃の表面に出ており、他の臓器にも広がっています。遠隔転移がある状態です。
病理分類
胃がんの治療方針を決めるためのステージには、病理分類があります。病理分類は、手術で切除した病変を診断して実際のがんの広がりを評価した分類です。
一度手術をした後にどのように治療を進めていくのかを判断する際にも使われます。分類結果は、臨床分類と一致しないこともあります。
遠隔転移 | なし(M0) | あり | ||||
なし(N0) |
1〜2個 (N1) |
3〜6個(N2) |
7〜15個 (N3a) |
16個以上(N3b) | 有無にかかわらず | |
T1a,T1b | ⅠA | ⅠB | ⅡA | ⅡB | ⅢB | Ⅳ |
T2 | ⅠB | ⅡA | ⅡB | ⅢA | ⅢB | |
T3 | ⅡA | ⅡB | ⅢA | ⅢB | ⅢC | |
T4a | ⅡB | ⅢA | ⅢA | ⅢB | ⅢC | |
T4b | ⅢA | ⅢB | ⅢB | ⅢC | ⅢC |
(参考:がん情報サービス 胃がん 治療)
病理分類によるステージ4の胃がんでは、遠隔転移があります。
ステージごとの胃がんの5年生存率
続いては、ステージごとの胃がんの5年生存率(ネット・サバイバル)を紹介します。
がん治療における5年生存率は「手術5年後に生存しているかどうか」の指標です。完治しているかどうかを評価する指標ではありません。
そのため、治療から5年を経過して生存していたとしても再発している可能性はあるものの、一つの目安として確認できるでしょう。
ステージ1 | 92.8% |
ステージ2 | 67.2% |
ステージ3 | 41.3% |
ステージ4 | 6.3% |
(参考:がん情報サービス 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム)
ステージ4の胃がんになった場合の主な治療法
では、ステージ4の胃がんになった場合にはどのような治療法があるのでしょうか。
いわゆる末期がんといわれる、ステージ4の胃がんになった場合の主な治療法について、次章で解説します。今回紹介する治療法の他に、特定の転移の状況により手術が検討される場合もあります。ただし多くの場合は根幹治療ではなく、症状を和らげたり延命をしたりするための治療となります。
薬物療法
薬物療法は化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤などの薬物を利用した治療方法です。薬物によって、がん細胞の増殖を防いだり死滅させる効果が期待できます。
見えないがん細胞にも効果があるとされており、転移のあるがんや白血病、リンパ腫の治療に選択されることが多いです。手術療法の前後に、術後の再発予防目的としても使用されるケースもあります。
臨床分類・病理分類どちらかでステージ4と診断されたときに薬物療法を検討します。胃がんの薬物療法で使う薬には、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬などがあります。
これらの薬を単独もしくは組み合わせて、点滴もしくは内服で使用します。どの薬を用いるのかは、医師と相談の上決定します。
薬物療法だけでがんを完全に治すことは難しいが、転移しているがんの進行を抑えたり、がんによる症状を緩和する効果が期待できます。
また、薬物療法では、副作用についても把握しておくことも重要です。薬ごとにさまざまな副作用が起こり得ます。使用する薬の副作用について、どのタイミングでどのような副作用が出る可能性があるのかを事前に医師に確認しておきましょう。
細胞障害性抗がん薬の主な副作用は以下の通りです。
- 治療直後にあらわれるアレルギー反応
- 治療から1~2週間程度の期間にみられる吐き気や食欲低下・だるさ・口内炎・下痢
- 2週間以降からみられる脱毛や手足のしびれ・皮膚の異常
- 肝機能障害
- 腎機能障害
- 血液の異常
分子標的薬の主な副作用は以下の通りです。
- 薬剤の投与から24時間以内に起こる過敏症
- 心機能の低下
- 高血圧
- 鼻出血
放射線療法
ステージ4の胃がんになった場合の主な治療法の2つ目は、放射線療法です。
放射線療法は、放射線をがんに放射することで、細胞の遺伝子に損傷を与える治療法です。正常細胞へのダメージが少ない放射線療法も研究が進められています。放射線療法は通院で受けられることもあり、比較的負担の少ない治療法です。
手術が困難な場合の治療や、手術後の補助的な治療として選択されることが多いです。また、化学療法と併用して行われることもあります。
胃がんに対する放射線療法は、がんを根治するというよりも進行がんや再発がんに対する補助的な治療をする役割が大きいです。胃がんによって食事ができない、痛みがあるなどの場合に、症状緩和目的で放射線を照射します。胃がんの臨床分類でステージ4と診断されたときに放射線療法を検討します。
緩和手術
ステージ4の胃がんになった場合の主な治療法の3つ目は、緩和手術です。
胃がんの臨床分類でステージ4と診断されたときに放射線療法を検討する場合があります。緩和手術とは、患者の苦痛を伴う症状を軽減させることを目的とした手術です。
進行がんでは、転移によって潰瘍が生じた場合に大量の出血や汚臭などが発生し、余命が短い中で入院が必要となります。緩和手術によって出血や汚臭などを防ぎ、入院が不要になる可能性もあり患者さんのQOLが上がります。
対症療法(緩和ケア)
ステージ4の胃がんになった場合の主な治療法の4つ目は、対症療法(緩和ケア)です。
対症療法(緩和ケア)とは、がんによる心身のさまざまなつらさを和らげる取り組みのことです。緩和ケアは、進行していないうちから始めるものです。
がんの根治を目指す治療法ではないが、がんによる痛みや治療による副作用の症状が強い場合に症状を緩和させることができます。担当医師や看護師、理学療法士、管理栄養士などが連携して、がんの治療を行います。
なお、緩和ケアは、胃がんであることを告知されたタイミングから受けるのが良いでしょう。
身体的な辛さだけではなく、治療を受ける方や家族の精神的な辛さや不安、苦しみを緩和するケアも行われます。自身が辛いと感じたときはいつでも受けられるので、タイミングは自身で選択できます。
緩和ケアの種類について、主に基本的緩和ケアと専門的緩和ケアの2種類があります。がん患者に関わるすべての医療者によって提供されるものを、基本的緩和ケアと呼びます。専門的緩和ケアは、緩和ケアについて特別なトレーニングを受けた専門家によって対応されるケアです。
また、緩和ケアの具体例は以下の通りです。
- 痛み止めなどの薬の処方や調整をする
- お話をして不安の軽減や気晴らしをする
など。
術前補助化学療法
ステージ4の胃がんになった場合の主な治療法の5つ目は、術前補助化学療法です。
術前補助化学療法とは、手術前に抗がん剤による治療を受けてがんを縮小させたり抑えたりする治療法です。胃がんの臨床分類で遠隔転移なしでリンパ節転移ありのステージ4と診断された場合に選択するケースがあります。
胃切除・リンパ節郭清
ステージ4の胃がんになった場合の主な治療法の6つ目は、胃切除・リンパ節郭清です。手術では、がんと胃の一部またはすべてを取り除きます。
同時に胃の周囲のリンパ節を取り除くリンパ節郭清が行われる場合もあります。胃がんの臨床分類で遠隔転移がないステージ4と診断された場合に選択するケースがあります。
ステージ4の胃がんでは免疫療法も選択肢の一つ
がんの標準治療の他にも検討できる治療法として、免疫療法があります。ステージ4の胃がんでは免疫療法も選択肢の一つです。
免疫療法とは、免疫の力を利用した治療法です。現在行われている免疫療法にはさまざまな種類がありますが、免疫療法は大きく以下の2つに分けられます。
- 免疫チェックポイント阻害薬による治療
- 免疫細胞療法
ステージ4の胃がんでは、上記2つの治療法を検討することができます。それぞれの治療法について次章以降で解説します。
免疫チェックポイント阻害薬による治療
ステージ4の胃がんで検討される治療法に、免疫チェックポイント阻害薬によるものがあります。
免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞やがん細胞のアンテナに作用し、免疫にブレーキがかかることを防ぐ薬です。さまざまな種類があり、それぞれ対応するがんが異なります。
現在胃がんで承認されている、免疫チェックポイント阻害薬は以下の通りです。
- オプジーボ(ニボルマブ)
- キイトルーダ(ペムブロリズマブ)
免疫チェックポイント阻害薬の治療で起こり得る主な副作用は以下の通りです。
- 間質性肺炎
- 重症筋無力症
- 心筋炎
- 筋炎
- 横紋筋融解症
- 大腸炎
- 重度の下痢
- 1型糖尿病
- 免疫性血小板減少性紫斑病
- 肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎
- 甲状腺機能障害
- 神経障害
- 腎障害
- 副腎障害
- 脳炎
- 重度の皮膚障害
- 静脈血栓塞栓症
- 注入時過敏反応
免疫細胞療法
免疫細胞が攻撃する力を強める効果がある治療方法として、免疫細胞療法といわれるものがあります。免疫細胞療法には多くの種類があり、薬物療法と並行して治療を受けるケースもあります。ここではいくつかの治療法について、特徴を紹介します。
アルファ・ベータT細胞療法 | アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)では、リンパ球を分離して、T細胞の表面にあるCD3という分子を刺激して、T細胞を活性化させます。
その上で、インターロイキン2でリンパ球を増殖させ、患者さんの体内に戻すという治療方法です。 安全性が高く、ほぼすべてのがんに適応できるという特徴があります。 |
活性化Tリンパ球療法 | Tリンパ球は、樹状細胞からの指示を受けて、がん細胞を攻撃します。
活性化Tリンパ球療法では、Tリンパ球を培養し増殖させ、さらに攻撃力を高めたものを体内に戻す治療法です。 |
NK細胞療法 | NK細胞は、がん細胞を発見すると真っ先に単独で攻撃する能力を持っています。
NK細胞療法ではこの仕組みを利用して、自身の免疫細胞を用いてがん細胞にアプローチします。 NK細胞療法では、自身の血液から採取したNK細胞を培養・活性化させます。 特殊なNK細胞培養培地を用いることで、効率的に高い細胞殺傷能力を持ったNK細胞の培養が可能です。 |
6種複合免疫療法 | 6種複合免疫療法は、免疫細胞を一度体外へ取り出し、活性化・増殖させて体内へ戻す療法です。
がん細胞を発見、認識、攻撃するなどそれぞれ役割を持つ免疫細胞を同時に増殖・活性化することで、より効果的にがん細胞と闘えるように免疫力を高めてくれます。 手術や抗がん剤治療、放射線治療が難しい転移・再発したがんに対しても効果が表れるケースもあります。 |
まとめ
今回は、ステージ4の胃がんになった場合の治療法について解説しました。
ステージ4の胃がんになった場合は、薬物療法や放射線療法、緩和手術、対症療法(緩和ケア)、術前補助化学療法、胃切除・リンパ節郭清が検討されます。ステージ4の胃がんでは免疫療法も選択肢の一つですので、医師と相談の上検討しましょう。
同仁がん免疫研究所は、今回紹介した免疫療法の一つである「6種複合免疫療法」を行っている施設です。
同仁がん免疫研究所では、厚生労働省の許可を受けた細胞培養施設にて、極めて高度な安全管理体制のもとで細胞培養の委託を受けています。
細胞培養数は圧倒的で、約3週間で1,000から2,000個の細胞を20から50億個まで培養できます。
6種複合免疫療法についてより詳しく知りたい方は、こちらよりご確認ください。
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