がん免疫療法コラム
がん免疫療法は「手術前」に使う時代へ?術前免疫療法の広がり

がん免疫療法は「手術後」だけでなく「手術前」にも使われる
がん免疫療法というと、手術で取り切れない進行がんや再発がんに使う治療というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし近年、免疫チェックポイント阻害薬を「手術の前」に使う治療が注目されています。これを術前免疫療法、またはネオアジュバント免疫療法と呼びます。
術前療法とは、手術の前に薬物療法を行い、がんを小さくしたり、目に見えない微小ながん細胞に早い段階で働きかけたりする治療です。従来は抗がん薬による術前化学療法が中心でしたが、現在は免疫療法を組み合わせる研究が進み、手術可能な非小細胞肺がんで大きな変化が起きています。
なぜ手術前に免疫療法を使うのか
術前に免疫療法を行う理由の一つは、がんが体内に残っている状態の方が、免疫細胞ががんの特徴を認識しやすい可能性があるためです。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞に直接毒性を示す薬ではなく、免疫のブレーキを外して、患者さん自身の免疫細胞ががんを攻撃しやすくする治療です。
手術でがんを取り除く前に免疫療法を使うことで、原発巣だけでなく、すでに体内に広がっているかもしれない小さながん細胞にも免疫が反応することが期待されています。また、手術で取り出した組織を調べることで、治療によってどの程度がん細胞が消えているかを確認できる点も重要です。病理学的完全奏効、つまり顕微鏡で見ても生きたがん細胞が確認できない状態は、治療効果を考えるうえで重要な指標の一つです。
非小細胞肺がんで進む治療戦略の変化
術前免疫療法の広がりを象徴する領域が、手術可能な非小細胞肺がんです。臨床試験では、術前にニボルマブと化学療法を併用することで、化学療法単独と比べて無イベント生存期間や病理学的完全奏効率が改善し、手術の実施可能性を大きく損なわなかったことが報告されています。
さらに別の臨床試験では、手術前にペムブロリズマブと化学療法を併用し、手術後にもペムブロリズマブを継続する周術期治療が検討されました。この試験でも、無イベント生存期間や全生存期間の改善が報告されており、免疫療法は「再発してから使う治療」だけでなく、「再発を防ぐために早い段階から使う治療」へと位置づけが広がっています。
期待される一方で、慎重な判断も必要
術前免疫療法は、がん治療の考え方を大きく変える可能性があります。手術前にがんを小さくできれば、手術の負担を減らせる可能性があります。また、早い段階で全身に免疫反応を起こすことで、再発リスクを下げられる可能性も期待されています。
一方で、すべての患者さんに同じように有効とは限りません。免疫療法では、肺炎、腸炎、肝機能障害、内分泌障害など、免疫が過剰に働くことで起こる副作用にも注意が必要です。手術前に副作用が強く出た場合、手術の時期や治療計画に影響する可能性もあります。
今後は、どの患者さんに術前免疫療法が特に有効なのか、どの薬剤や組み合わせが最適なのか、手術後の治療をどこまで続けるべきかが重要な課題になります。
参考URL
The evolving role of neoadjuvant immunotherapy in resectable non-small cell lung cancer: a narrative review
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41660484/
Neoadjuvant, Perioperative, and Adjuvant Immunotherapy in Early-Stage Surgically Resectable Non-Small Cell Lung Cancer: Updates and Future Perspectives