がん免疫療法コラム
がん免疫療法における「偽進行」とは?見逃さないための基礎知識

偽進行とは
がん免疫療法における「偽進行(pseudoprogression)」とは、一見すると腫瘍が増大したように見えるにもかかわらず、実際には治療が奏効している現象を指します。具体的には、腫瘍のサイズが一時的に大きくなったり、新たな病変が出現したように見えたりした後に、時間の経過とともに腫瘍が縮小へ転じる経過をたどります。
従来の抗がん剤治療では、腫瘍の増大はそのまま病勢の進行と判断されてきました。しかし、免疫チェックポイント阻害薬の登場によって、この常識が必ずしも当てはまらないケースが報告されるようになりました。
なぜ偽進行が起こるのか
偽進行が起こる背景には、免疫療法の作用機序が深く関わっています。免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞の働きを抑制しているブレーキを解除し、がん細胞に対する免疫反応を強める治療です。
この過程で、活性化された免疫細胞が腫瘍組織へと集まり、炎症や浮腫を引き起こします。その結果、画像上では腫瘍が大きくなったように見えたり、新たな病変が出現したように見えたりすることがあります。しかしこれは腫瘍そのものの増殖ではなく、免疫反応による一時的な変化に過ぎません。
偽進行は、見かけ上は悪化しているように見えても、実際には治療が効いている過程で生じる現象であるといえます。
発生頻度と臨床的意義
偽進行は免疫療法において重要な概念ですが、その発生頻度は決して高いものではありません。報告によってばらつきはあるものの、免疫チェックポイント阻害薬治療における偽進行の発生率はおおよそ数%〜10%未満とされています。
それでも臨床的に重要視される理由は、判断を誤ることで治療方針に大きな影響を与える可能性があるためです。腫瘍の増大を単純に進行と判断してしまうと、本来は効果が期待できる治療を中止してしまうリスクがあります。一方で、実際のがんの進行も避けなければならず、適切な見極めが求められます。
偽進行は、場合によっては免疫療法が奏効しているサインとして捉えられることもあり、その解釈には慎重さが必要です。
偽進行をどう見極めるか
偽進行と真の進行を明確に区別することは、現在でも容易ではありません。そのため、単一の検査結果だけで判断するのではなく、時間経過を踏まえた総合的な評価が重要になります。
臨床では、画像検査を一定期間後に再評価することで、腫瘍の変化の方向性を確認する方法がとられます。また、患者の全身状態や症状の変化も重要な手がかりとなります。
このような背景から、免疫療法に特化した評価基準が提案されており、従来の評価方法を補完する役割を担っています。いずれにしても、免疫療法においては一度の画像所見のみで結論を出さず、慎重に経過を追う姿勢が重要です。
偽進行は、発生頻度は高くないものの、臨床判断に与える影響は大きく、適切な理解と対応が求められます。今後、免疫療法がさらに広がる中で、医療従事者がこの概念を正しく理解し、患者に適切な説明ができることの重要性が高まることが予想されます。
参考URL
Incidence of Pseudoprogression during Immune Checkpoint Inhibitor Therapy for Solid Tumors: A Systematic Review and Meta-Analysis
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7526949/?utm_source=chatgpt.com