がん免疫療法コラム
免疫療法+緩和ケアの併行戦略

免疫療法と緩和ケアを併行するという新しいがん治療の考え方
がん治療は近年、免疫療法の登場によって大きく進歩してきました。免疫療法は、患者さん自身の免疫の力を使ってがんを攻撃する治療で、これまで治療が難しかったがんでも効果が期待できるケースが増えています。
一方で、治療の効果がいつ、どの程度現れるかは個人差が大きく、体調の変化や不安を抱えながら治療を続ける患者さんも少なくありません。こうした中で注目されているのが、免疫療法と同時に「緩和ケア」を早い段階から取り入れる併行戦略です。これは治療を諦めるという意味ではなく、治療を続けながら生活の質を守るための重要な取り組みです。
緩和ケアは「終末期の医療」ではない
緩和ケアという言葉を聞くと、人生の最終段階に受ける医療だと考える方も多いかもしれません。しかし、現在の医療では緩和ケアは治療の初期段階から受けることができる支援とされています。
緩和ケアの目的は、痛みや息苦しさといった身体的なつらさだけでなく、不安や落ち込みなどの心の負担、日常生活や家族との関係に関する悩みまで含めて和らげることです。患者さん本人だけでなく、家族も支えることが大きな特徴です。治療と並行して緩和ケアを受けることで、症状が軽減されるだけでなく、治療内容への理解が深まり、自分らしい生活を続けやすくなることが報告されています。
免疫療法との併行で変わる治療設計
近年、免疫チェックポイント阻害薬のような免疫療法は、進行がん患者さんに長期的な効果や寛解(がんが消える状態)をもたらすケースも出てきています。従来は治療効果が期待できないと考えられていた病状でも、免疫療法が可能性を広げた一方で、治療効果の予測が難しかったり、副作用が個人差で現れたりするという課題があります。
このような環境において、緩和ケアの早期統合は次のような意味を持ちます。
- 副作用の早期対応
免疫療法特有の体調変動(疲労感、皮膚症状、内臓症状など)を専門的に評価・調整できる。 - 治療目標の共有化
患者さん自身が「何を大切にしたいのか」を治療チームと整理し、治療方針を決めやすくなる。 - 生活の質の向上
痛みや不安などを早く把握・支援することで、治療中の生活満足度が高まる。
治療の目的や今後の見通しについて医療者と話し合う機会が増えることで、患者さん自身が「どのように治療を続けたいか」を整理しやすくなります。研究では、免疫療法を受けながら緩和ケアを併行した患者さんは、生活の質が保たれやすく、不安や抑うつが軽減される可能性が示されています。
なぜまだ広まらない?導入の課題と未来へ
緩和ケアの早期導入が重要であるにも関わらず、実際の臨床では多くの患者さんが十分に受けられていません。世界保健機関のデータでは、緩和ケアが必要な患者のうち、実際に受けている人は約14%程度という報告もあります。
緩和ケアの有用性が示されているにもかかわらず、実際に早期から受けられている患者さんは多くありません。その背景には、緩和ケアに対する誤解や情報不足があります。医療者側でも、緩和ケアをいつ、どのように導入すべきかが十分に共有されていない場合があります。
こうした課題を解消するためには、患者さんと医療チームの間で目標や治療方針を共有しやすい環境づくり、緩和ケアへの理解を深める教育や制度整備が必要です。
参考URL
Early Integration of Palliative Care for Patients Receiving Systemic Immunotherapy for Renal Cell Carcinoma
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7656105/?utm_source=chatgpt.com
Early Integration of Palliative Care for Patients Receiving Systemic Immunotherapy for Renal Cell Carcinoma