がん免疫療法コラム

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がんワクチンによる発症抑制とオーダーメイド治療

「がんを防ぐ」「再発を防ぐ」新しい免疫療法

通常のワクチンは、インフルエンザや麻疹、風疹などの病気を予防するために投与されます。がんワクチンは、通常のワクチンと同様にがんを予防するとともに、がんに対する免疫を活性化させてがんを抑制する働きもあります。

がん細胞にはがん特有の目印(抗原)があります。ワクチンはこの目印を体に覚えさせることで、再び同じがん細胞が現れたときにすぐに攻撃できるようにします。
たとえば、日本では「GPC3」というたんぱく質を使ったワクチンが研究されています。肝臓がんの患者さんで、手術や治療を終えたあとに再発を防ぐ目的で使われています。

再発を抑える兆し

GPC3ワクチンの研究では、肝臓がんを外科治療で取り除いた患者さんに対し、1年間ワクチンを打ち続ける臨床試験が行われました。その結果、ワクチンを受けた人の方が、1年後や2年後の再発率が低いという傾向が見られました(1年後の再発率が24%、対照群は48%)。

また、小児のがん患者を対象にした試験でも、安全性が確認され、がん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)が増えた患者では、病気の進行が遅くなる傾向がありました。つまり、「がんワクチンによって免疫が働くことで、がんの再発や進行を抑えられる可能性がある」と期待されています。

オーダーメイド治療とは?―一人ひとりに合わせた免疫療法

がんは人によって性質が異なります。同じ肝臓がんでも、できる場所や遺伝子の違いによって、がん細胞の特徴が変わります。そのため、「誰にでも同じワクチンが効くわけではない」という課題があります。がん治療において、近年注目されているのがオーダーメイド治療(個別化免疫療法)です。これは、がん組織を詳しく調べて、その人のがんが持っている抗原を確認し、その患者専用のワクチンを作るという方法です。

最近では、がん特有の遺伝子変異からできる「ネオアンチゲン」と呼ばれる目印を使った完全オーダーメイドワクチンの研究も進んでいます。日本でも、こうした個別化がんワクチンの臨床研究が報告されており、将来的には一人ひとりに最適な免疫療法が受けられる時代になると期待されています。

今後の課題と将来への期待

がんワクチンはまだ研究段階にあります。
効果が出る人と出にくい人がいることや、長期的な効果を確かめるためのデータが不足している点が課題です。また、ワクチンの開発には時間と費用がかかり、保険適用も進んでいません。

それでも、がんワクチンは体の免疫の力を利用してがんを防ぐという新しい発想で、多くの研究者が注目しています。将来的には、手術や抗がん剤治療と並んで「再発を防ぐ柱の一つ」となる可能性があります。

参考URL

Phase II study of the GPC3-derived peptide vaccine as an adjuvant therapy for hepatocellular carcinoma patients

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27467945/

 

 

Phase I study of glypican-3-derived peptide vaccine therapy for patients with refractory pediatric solid tumors

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29296538/

 

 

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