がん免疫療法コラム
市販のプロバイオティクスはがん免疫療法ではNG?
腸活ブームの落とし穴?
多くの場合、腸内環境を整えることは健康を維持するためにも重要です。しかし、がん免疫療法を受けている方は、腸活の方法によっては治療効果を低下させてしまう可能性もあるので注意が必要です。
アメリカで行われた皮膚がん(メラノーマ)の患者を対象とした研究では、市販のプロバイオティクス(善玉菌を含むサプリ)を使っていたグループで治療効果が低くなる傾向があると報告されました。
研究でわかったプロバイオティクスの影響
アメリカのパーカーがん免疫療法研究所(PICI)とテキサス大学MDアンダーソンがんセンターが共同で、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受ける前のメラノーマ患者113人を対象に、食生活やサプリの使用状況と腸内細菌の状態を詳しく調べました。
その結果、市販のプロバイオティクスを使っていた患者では、ICIに対する反応がおよそ70%も低下していたことが明らかとなりました。一方で、野菜や果物などの食物繊維を多くとっていた人は、治療効果が約5倍に高まっていました。このことから、腸の健康に良いと思ってとっていたサプリが、逆に免疫の働きを妨げていた可能性があります。
腸内細菌の「多様性」がカギ
がん免疫療法の効果を高めるには、「腸内細菌の多様性」が重要と考えられています。プロバイオティクスは一部の菌だけを大量にとるため、かえって腸内のバランスがくずれ、多様性が失われることがあります。腸内細菌のバランスが崩れることで免疫細胞の働きが弱まり、治療効果が落ちてしまうと考えられています。
一方で、野菜や全粒穀物、果物、発酵食品などをバランスよく食べると、腸内にさまざまな種類の細菌が育ち、免疫機能を活性化させる環境が整います。サプリに頼らず、日々の食事で腸を整えることが、がん治療においても重要です。
サプリを使う前に主治医と相談することが大切
健康のために摂っているサプリメントが、がん治療を邪魔してしまう可能性があります。サプリメントは、医薬品のように品質基準が厳格に定められていないため、品質にもばらつきがあります。治療効果にも影響するので、がん治療中の方やその家族は、サプリを使う前に必ず主治医や薬剤師に相談することが大切です。
今後、腸内環境とがん免疫療法の治療効果への影響について研究が進むことで、がん治療にも新しい展望があるかもしれません。まずは、サプリメントに頼る前にバランスの取れた食生活に改善することが一番の腸活です。主治医と相談しながら、納得できる治療を選んでいきましょう。
参考URL
Probiotics Linked to Poorer Response to Cancer Immunotherapy in Skin Cancer Patients