がん免疫療法コラム

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抗がん剤とサプリメント

サプリメント併用が気になる理由

がん患者さんが、抗がん剤の標準治療と並行してサプリメントや健康食品を使用するケースが報告されています。長期間にわたって治療が続くがんにおいて、サプリメントや健康食品は、精神的負担を和らげる役割を持つと言えます。しかし、これらの成分が抗がん剤の血中濃度を変えてしまい、治療効果や副作用に影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。

特に、薬を代謝・排泄する酵素(CYP3A など) や 輸送たんぱく質(P‑gp など)をサプリメントが影響することで薬が「効きすぎる」「効かなくなる」といったトラブルが起こり得ます。

抗がん剤とサプリの併用問題

スピルリナやタモギタケ抽出エキス(抗酸化作用や免疫力を高める働きが期待されるサプリメント)は、CYP3Aという代謝酵素を抑える作用が試験管・動物実験で示されました。CYP3Aで代謝されるパクリタキセルなどの血中濃度が上がり、副作用(しびれ・白血球減少)が増える恐れがあります。セントジョーンズワートは逆にCYP3Aを誘導(酵素の働きを強くする)することで、イリノテカンの活性代謝物(SN‑38)を約4割減らした臨床報告があります。薬が十分に効かなくなる可能性があるため、併用は避けるべきとされています。サプリメントだから安全ということはなく、抗がん剤治療の継続が困難になるものもあるので注意が必要です。

免疫チェックポイント阻害薬との相互作用

近年はニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が標準治療になっています。ICIは腸内細菌叢のバランスに影響を受けることがわかっており、特定のプロバイオティクス(例:CBM588)を一緒に飲むと効果が高まったという臨床試験結果が報告されました。

一方、標準治療として使われていない市販のプロバイオティクスを自己判断で摂取すると、かえってICIの奏効率が約70%低下したという解析もあります。

このように、一般的には腸内環境を整えることで、健康面で良い影響があると考えられていますが、がん免疫療法では効果に予測できない影響が起きる可能性もあります。サプリメントと抗がん剤の併用は専門家に確認してもらうことが重要です。

安全に治療を受けるために

安全にがん治療を受けるためには、処方薬やOTC薬、サプリメント、健康食品まで全ての生活情報を主治医や薬剤師と共有することが重要です。また、サプリメントで期待できる働きについて信頼できる情報源があるのか確認し、不明である場合は専門家に相談してください。がん治療の成功には、医療チームとの二人三脚が欠かせません。たかがサプリメントと思わず、情報共有をしていきましょう。

参考URL

がん患者における健康食品と医薬品併用の安全性に関する研究https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21K05490/

Herbal interactions with anticancer drugs: mechanistic and clinical considerations

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20345351/

Cabozantinib and nivolumab with or without live bacterial supplementation in metastatic renal cell carcinoma: a randomized phase 1 trial

https://www.nature.com/articles/s41591-024-03086-4?utm_source=chatgpt.com

 

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