がん免疫療法コラム
全ての人にがん免疫療法が届く可能性ーバイオシミラーという選択肢
がん免疫療法は医療経済的負担が大きい
免疫チェックポイント阻害薬が開発されてから、従来の抗がん剤治療では効果が見られなかった患者にも希望の光が照らされるようになりました。生存率の向上も報告され、多くのがん患者にとってがん免疫療法は重要な治療の柱です。しかし、がん免疫療法には、経済的負担という問題点があります。
免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫療法は、1回の投与でも数十万円に及ぶ製剤が少なくありません。厚生労働省資料では、国内医薬品売上トップ10のうち4剤がバイオ医薬品であり、薬剤費増加の主要因になっています。高額療養費制度を利用すれば自己負担は年齢・所得に応じた月額上限までとなり、極端に高額な治療費にはなりません。しかし、免疫チェックポイント阻害薬など高額な薬剤による保険財政への圧力は依然大きいのが現実です。
バイオシミラーとジェネリック医薬品の違い
ジェネリック医薬品は有効成分が先発医薬品と同一であり、医薬品としては添加物などの違いはあれど同じものです。しかし、バイオシミラーは「生物由来製剤」の極めて類似した「後続品」です。巨大で複雑なたんぱく質を細胞培養で再現するため、製造過程や糖鎖構造がわずかに異なる可能性があり、品質・有効性・安全性を先行薬と直接比較する臨床試験が義務づけられています。それでも薬価は先行品より概ね2〜3割低く設定され、採用すれば薬剤費を着実に削減できます。
バイオシミラーの導入によって保険医療制度の存続につながる
厚労省の試算では、主要バイオ医薬品7品目のバイオシミラー普及率を50%に高めるだけで年間数百億円規模の薬剤費が節減できると報告されています。がん領域ではリツキシマブやトラスツズマブに続き、免疫チェックポイント阻害薬の後続品も承認・開発が進行中で、臨床現場の選択肢は確実に拡大しています。薬剤費の抑制は保険料や自己負担割合の急激な引き上げを防ぎ、国民皆保険を将来へ受け渡すうえでバイオシミラーの普及は必要不可欠です。
がん免疫療法が全てのがん患者の選択肢になるかもしれない
高額療養費制度によって患者一人ひとりの負担は一定に抑えられますが、財源が逼迫すれば制度自体が揺らぎかねません。バイオシミラーの積極的活用は薬剤費を抑えながら治療の質を維持できる、持続可能な解決策です。今後、免疫チェックポイント阻害薬を含む新規バイオシミラーが普及すれば、これまで費用面で治療を諦めていた患者にもがん免疫療法が届く未来が現実味を帯びてきます。医師や薬剤師などの医療従事者は科学的根拠に基づき後続品を適切に導入し、「高額だから選べない」という障壁を取り除いていくことが求められています。
参考URL
バイオシミラーの基礎知識と使用促進に向けた取り組み,厚生労働省