がん免疫療法コラム
免疫チェックポイント阻害薬の irAE 治療と対策
免疫チェックポイント阻害薬で免疫関連有害事象(irAE)が起きる理由
免疫チェックポイント阻害薬が開発されたことによって、がん免疫療法が注目されるようになりました。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫細胞に対してブレーキをかける PD-1 /PD-L1 や CTLA-4 を阻害することで、免疫細胞を活性化させてがんを死滅させる治療薬です。活性化された免疫細胞が、がん細胞のみを攻撃すれば副作用はあらわれませんが、健康な臓器に対しても攻撃することがあり、皮膚炎や下痢などのさまざまなirAEを起こします。
主な irAE
もっとも多いirAEとして皮膚障害がありますが、 PD-1 /PD-L1 阻害薬単独使用で18%、 PD-1 /PD-L1 阻害薬とCTLA-4 阻害薬の併用療法では51.1%と高い頻度で見られます。発疹やかゆみなど軽症で経過することが多いですが、生活の質にも大きく影響するので経過を見ていく必要があります。
下痢や大腸炎などの胃腸障害は、30〜40%の患者で見られるので治療継続とともに対策する必要があります。化学療法でも同様に下痢などの副作用が見られますが、治療法が異なるので注意が必要です。
肺障害や肝障害は頻度も高く、重症になると命に関わることもあるので治療を継続できなくなる可能性もあるので早期の対策が必要です。
irAE の治療と対策
基本的に、irAEの治療法として、内服や静脈注射でのステロイド投与が中心です。皮膚科や消化器などの専門医と協力して治療し、場合によっては免疫チェックポイント阻害薬の中止を検討します。
皮膚障害については、症状が軽いものは外用ステロイド薬を塗って様子を見ます。症状が重い場合は、抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬、内服ステロイド薬(プレドニゾロン換算 0.5–1 mg/kg/日)、必要に応じてステロイドパルス療法などが行われます。
下痢などの胃腸障害については、3日より長く続く場合は、ステロイドの内服か静脈注射が行われます。ロペラミドのような下痢止めを使うとirAEの発見が遅れる可能性があるので、免疫チェックポイント阻害薬を使用している間は下痢止めの使用は推奨されていません。
irAEは、早期に治療することが大切です。治療開始前には、アレルギー歴や自己免疫疾患などの既往歴を確認して、考えられる症状についても患者さんとご家族にも共有することが早期治療につながります。いつもと違う体調変化が見られたらすぐに医師に相談してください。
irAE 対策ががん免疫療法の成功につながる
irAEを適切にコントロールすることで、がん制御率や生存期間を伸ばせる可能性が高まります。しかし、対応が遅れると重症化し、治療中断や致命的合併症を招きかねません。irAE は「怖い副作用」ではなく「対処可能なハードル」と捉え、準備・早期発見・迅速治療の3ステップを徹底することががん免疫療法の治療継続には重要です。
参考URL
がん免疫療法ガイドライン第3版
https://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/doc/20221212.pdf?utm_source=chatgpt.com