がん免疫療法コラム

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AIががん免疫療法の個別化に役立つ

がん免疫療法に対する期待と限界

がん免疫療法で使われる治療薬として「免疫チェックポイント阻害薬」があります。がん細胞が免疫細胞にかけている「攻撃するな」という信号をブロックし、免疫が再びがんを攻撃できるようにする薬です。従来の化学療法では効果がなかった患者にも、劇的にがんが縮小した例もあります。

しかし、がん免疫療法にも問題があります。効果が出るのは一部の患者さんに限られ、多くの患者さんには期待したほどの効果が得られないことがあります。また、免疫を活性化させるために、 重篤な副作用(免疫関連有害事象) が起こるリスクも無視できません。このため、患者さん一人ひとりに最適な治療を見極める「個別化医療」の重要性が高まっています。

AIとは?がん治療にどう使えるのか

医療分野でもAIの活用が進められています。 膨大なデータを解析してパターンを見つけ、判断を助ける技術 として使われています。がん治療に関しても、診断や治療方針の決定を補助するためにAI利用が研究されています。

がん患者さんから得られるデータは非常に多岐にわたります。

  • がん抗原の発現量
  • 遺伝子変異情報
  • タンパク質やバイオマーカーの発現量
  • 免疫細胞の分布や状態

これらのデータを人間の医師が一つひとつ分析して最適な治療を選ぶのは現実的に不可能です。AIは、過去の症例や研究データを学習し、新しい患者さんのデータを解析することで、治療効果や副作用のリスクを予想することも可能です。

AIががん免疫療法を個別化する具体的な方法

愛知県がんセンターでは、AIを使った免疫療法の個別化に関する研究が行われています。具体的には、AIが以下のような情報を総合的に解析します。

  • がん抗原の予測システムの高精度化
    がん患者の腫瘍内のT細胞が認識するがん抗原を、AIによって同定精度が上昇するかもしれません。将来的には、がん免疫療法における免疫抑制の解除に加え、がん細胞に対する免疫応答の増強ができる可能性があります。
  • 遺伝子・分子データの解析
    がん細胞にどのような遺伝子変異があるか、特定のバイオマーカーが発現しているかなどを解析します。これにより、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいかどうかの予測できる可能性があります。

AIは医師の最終判断を補助するツールであり、最終的な治療方針は医師が決定しますが、AIの支援によって治療の成功率を高めることが期待できます。

AIによるがん治療の未来

AIを活用したがん免疫療法の個別化は、医療現場に大きな変革をもたらしつつあります。従来、治療法の選択は統計学を用いた「集団の平均値」に基づいて行われていました。しかし実際には、がんの性質や患者さんの体質は一人ひとり異なります。AIの登場により、「一人の患者さんに最適な治療」を提供できる可能性が現実味を帯びてきました。

近い将来、AIはがん免疫療法だけでなく、さまざまながん治療の個別化に役立ち、治療効果の向上や副作用リスクの低減、患者さんの生活の質向上に貢献していくと期待されています。

 

参考URL

愛知県がんセンターと NEC、AI と実験免疫学の融合による 革新的がん免疫療法を目指した基礎的共同研究を開始

https://cancer-c.pref.aichi.jp/wp/wp-content/uploads/r20706.pdf

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