がん免疫療法コラム

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進行非小細胞肺がんに対するペンブロリズマブ単剤療法の5年実績

1.   背景:ペンブロリズマブの長期的な効果に迫る

ペンブロリズマブはがん免疫療法に使用されるPD-1阻害薬の一つであり、免疫チェックポイント阻害剤です。進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、特に腫瘍細胞におけるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の腫瘍割合スコア(TPS)が50%以上の患者に対して第一選択薬として使用されています。しかし、この治療法の長期的な治療効果については、これまで十分なデータが得られていませんでした。今回の研究は、多国籍かつ大規模なデータを基に、ペンブロリズマブ単剤療法の5年間の治療成績を評価し、臨床試験との比較を通じてその再現性を検証したものになります。

 

2.   研究方法:多国籍データによる包括的評価

この研究「Pembro-real 5Y」では、14か国61施設から集めたPD-L1のTPSが50%以上の進行NSCLC患者1,050人のデータを解析しています。追跡期間は中央値で70.3か月であり、KEYNOTE-024試験の実験群から得られた個別患者データ(IPD)と比較することで、臨床試験での結果と実臨床現場での治療効果の再現性を検証しています。

より厳密な比較を行うために、ECOGパフォーマンスステータス(PS)が2以上の患者、10mg以上のプレドニゾロンを使用している患者、EGFR/ALK遺伝子変異が陽性または不明の患者、自己免疫疾患を持つ患者を除外した「KN024類似コホート」を再構築しています。さらに、条件付き推論ツリー解析を用いて、5年生存率に影響を与える主要因子を特定しています。

 

3.   結果:5年生存率と治療の持続性

研究の結果、全体集団における5年生存率は26.9%(95%信頼区間: 23.8%~30.2%)、中央値全生存期間(OS)は21.8か月(95%信頼区間: 19.1~25.7か月)でした。特に、完全奏効を達成した32人(3.0%)の患者がデータカットオフ時点で無増悪生存を維持していました。

KN024類似コホートでは、5年生存率は29.3%(95%信頼区間: 25.5%~33.6%)、中央値OSは27.5か月(95%信頼区間: 22.8~31.3カ月)と報告されています。この結果は、KEYNOTE-024試験のIPDコホートと有意な差が見られず、ペンブロリズマブの効果が実臨床現場でも再現されることを示唆しています。

治療中止については、1,015人(96.7%)が治療を中止しており、その理由は病勢進行(64.9%)、副作用(15.4%)、治療完了(7.6%)、その他(10.4%)と分かれました。さらに、222人(21.1%)の患者が少なくとも24か月間治療を継続し、その5年生存率は副作用による中止群で72.7%、治療完了群で78.6%、その他の理由による中止群で84.2%と高い値を示していました。

 

4.   結論:ペンブロリズマブの有効性と今後の展望

本研究は、ペンブロリズマブ単剤療法が実臨床現場においても長期的な効果を発揮することを示す重要なデータを示しました。特に、PS、年齢、PD-L1のTPSが5年生存率の重要な予測因子であることが明らかになり、これらの知見は実臨床現場での治療方針の決定に大きな影響を与えると思われます。

進行非小細胞肺がんの治療は依然として課題が多いものの、この研究結果は個々の患者特性に基づいた治療戦略の最適化に向けた一歩となることが期待されます。今後、さらなるデータの蓄積と解析を通じて、より効果的な治療法の開発が進められることを期待します。

 

5.   参考文献

C Alessio ,et al. Determinants of 5- year survival in patients with advanced NSCLC with PD-L1≥50% treated with first-line pembrolizumab outside of clinical trials: results from the Pembro- real 5Y global registry. J Immunother Cancer 2025;13:e010674. doi:10.1136/jitc-2024-010674

 

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