がん免疫療法コラム
がん治療を支えるメンタルケア
がんになると強いストレスを経験する
がんは、日本において死亡率1位の疾患であり、患者にとって強いストレスを経験することが容易に想像できます。2007年6月よりがん対策推進基本計画に基づき、「すべてのがん患者およびその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」が目標とされ、がん患者と家族に対するメンタルケアも重要視されています。
がんの重症度に関わらず、約半数の人が適応障害やうつ病などの精神疾患が認められており、メンタルケアを行うことが患者のQOL維持に重要です。
がんの発症に精神疾患が関連することも
がんを発症する危険因子として喫煙歴や飲酒歴などが代表的ですが、精神疾患も頭頸部がんの発症に関連していることが報告されています。また、頭頸部がんは、化学療法や食べ物を飲み込む力が低下することで低栄養状態や脱水が起こるリスクもあります。低栄養状態や脱水を起こしやすい頭頸部がんは、他のがんよりもせん妄のリスクが高いのでメンタルケアやせん妄に対する治療も必要です。
また、慢性的なストレスは、免疫機能を低下させる可能性もあり、がん治療に影響する可能性もあります。メンタルケアをしてストレスを軽減することは、治療継続や治療効果にも影響することも考えられます。
がん治療とメンタルケアを同時に行うのが重要
がん患者の心理的反応としては、診断時に心理的ショックを受けて不安や抑うつ、不眠などの症状があらわれます。2週間かけて徐々に悲嘆や絶望などが改善されますが、10〜30%は適応障害、3〜10%はうつ病を発症することが知られています。そのため、がんと診断と同時にメンタルケアを行うことが、精神疾患の発症を抑えるためにも重要です。
がんの告知は、がん患者本人はもちろん、家族も心理的ショックを受けます。がん患者と家族にもメンタルケアを行っていくことも考えた方が良いでしょう。
また、がん治療と仕事の両立、生活の不安などに悩みがある場合は、ソーシャルワーカーに相談することで解決する可能性もあります。がん治療で不安がある場合は、早期に相談することが大切です。
がん免疫療法への不安すぐに相談を
近年、がん治療第4の柱として注目されるようになったがん免疫療法ですが、さまざまながん治療を受けた患者にとって最後の希望になることもあります。その際、がん免疫療法を受ける前に、不安やストレスで精神疾患を発症するリスクも考えられます。もし、がん免疫療法を受けることに不安を感じているのであれば、すぐに相談してください。
参考URL
がんとこころ, 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-05-007.html
がん患者の心理と心のケア, 日耳鼻 113: 45―52,2010
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/113/2/113_2_45/_pdf