がん免疫療法コラム

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irAEsとしての胃腸障害と対処法

免疫チェックポイント阻害薬による胃腸障害とは?

近年、免疫チェックポイント阻害薬ががん治療において重要な役割を果たしていますが、これらの薬剤は免疫関連有害事象( irAEs)を引き起こすことがあります。その中でも、胃腸障害は比較的よく見られるirAEの一つです。irAEsによる胃腸障害は、全ての重症度を含めると30〜40%の患者にみられます。

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫からの攻撃を回避するメカニズムを阻害することで、患者の免疫システムを活性化し、がん細胞を攻撃させます。しかし、この免疫活性化が過剰になると、正常な組織にも攻撃が及び、自己免疫反応が引き起こされます。その結果、胃腸障害を含むirAEsが発生することがあります。

胃腸障害としては、下痢や腹痛、粘血便、体重減少などの症状が見られることが多く、重症化すると大腸炎に進行する場合もあります。

これらの症状は、通常の感染症や薬剤性の下痢と見分けるのが難しいため、患者の既往歴や投薬履歴を慎重に確認することが重要です。

 

下痢止めの使用が重症化を招くリスク

胃腸障害の症状として下痢が現れた場合、多くの患者は下痢止め薬を使用したいと考えるかもしれません。しかし、irAEsによる下痢に対しては、安易に下痢止め薬を使用することは危険です。

免疫チェックポイント阻害薬による下痢は、過剰に働いた免疫が腸管組織を攻撃することで炎症が起こることが原因です。単純に腸の動きを抑える下痢止め薬を使用すると、症状を悪化させる可能性があります。また、下痢を抑えることで胃腸障害の治療が遅れる可能性もあるので注意が必要です。

 

irAEsによる胃腸障害の治療法

irAEsによる胃腸障害の治療には、症状の重症度に応じた適切なアプローチが必要です。軽度の下痢や腹痛の場合は、まずは免疫チェックポイント阻害薬の一時中止や減量が検討されます。それでも改善が見られない場合、または中等度以上の症状がある場合は、炎症を抑えるステロイド療法が有効とされています。

初期のステロイド治療で十分な効果が得られない場合には、さらに免疫抑制剤であるインフリキシマブなどの使用が検討されます。

 

適切な対処で治療を継続できる

irAEsによる胃腸障害が発生した場合でも、適切に対処することで、免疫チェックポイント阻害薬による治療を継続できる可能性があります。重要なのは、早期に症状を認識し、医師に相談することです。患者が自己判断で市販薬を使用することは避け、必ず専門医の指示に従うことが必要です。

免疫チェックポイント阻害薬は、がん治療において非常に有効な選択肢であり、irAEsのリスクを理解し、適切な管理をすることで治療を安全に継続することも可能です。

 
参考URL
がん免疫療法ガイドライン第3版(案),公益社団法人日本臨床腫瘍学会
https://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/doc/20221212.pdf

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