がん免疫療法コラム
がん免疫療法における間質性肺炎
がん免疫療法における有害事象
がん免疫療法に使われる「免疫チェックポイント阻害薬」は、がんによって抑制された免疫機能を活性化させてがん治療をします。活性化された免疫機能によってがん細胞を攻撃しますが、免疫機能が活性化され過ぎると健康な細胞も攻撃してしまうことがあります。このような免疫機能の暴走によって起こる副作用が「免疫関連有害事象(irAE)」です。皮膚炎などの症状が比較的軽いものから、重症筋無力症やⅠ型糖尿病などの治療継続が困難になるものまで幅広い症状があらわれることがあります。間質性肺炎も免疫関連有害事象で起きる副作用の一つです。
間質性肺炎の問題点
2016年に国内ではじめて承認された免疫チェックポイント阻害薬「ニボルマブ」は、切除不能肺がんや再発肺がんに対して投与が増加し、2017年8月には15000例以上の投与が報告されています。それに合わせて免疫関連有害事象についても報告されており、ニボルマブ投与15879例中、500例で重篤な間質性肺炎が報告されています。約4%の人に間質性肺炎の発症が認められることとなり、症状によっては治療の継続が困難になることもあるので、免疫関連有害事象への早期介入が必要です。
間質性肺炎は早期発見が重要
間質性肺炎は、何らかの理由によって肺細胞壁に炎症が起きて、深刻なダメージを受けることで酸素と二酸化炭素のガス交換ができなくなる疾患です。間質性肺炎の初期症状として息切れや痰のでない咳(空咳)、発熱などがみられます。免疫チェックポイント阻害薬による間質性肺炎は、免疫機能の暴走によって肺細胞を攻撃することで起きます。
間質性肺炎を併発した肺がんでは、生存率に大きく影響することが知られています。また、間質性肺炎を発症すると高確率で肺がんを併発することがあるので、がん免疫療法を受けて間質性肺炎を起こすと新たながんの原因になる可能性もあります。免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けてから咳が出る、呼吸がしづらいなどの症状を感じたら早急に治療を受けることが重要です。
間質性肺炎併発がんは別の治療も検討される
近年では、間質性肺炎についての知見も蓄積されており、事前に予防治療をしながらがん治療を受けられるようになりました。また、間質性肺炎を併発した肺がんに対して有効的な治療法も開発されています。
がん免疫療法における間質性肺炎についても、発症を予防もしくは新規治療法が開発される可能性もあります。
参考資料
免疫チェックポイント阻害薬の副作用や注意したほうがよいことにはどのようなものがあるでしょうか,特定非営利活動法人日本肺癌学会
https://www.haigan.gr.jp/public/guidebook/2019/2020/Q45.html
間質性肺炎合併肺癌の治療戦略―より良い予後と治療関連急性増悪の減少をめざして―,肺癌.2017;57:819-825
https://www.jstage.jst.go.jp/article/haigan/57/7/57_819/_pdf