がん免疫療法コラム

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漢方薬とがん免疫療法の新たな可能性

漢方薬は支持療法に使われる

がん治療においても漢方薬が使われることがあります。漢方薬自体に抗がん作用はありませんが、がん治療に伴う副作用を軽減する目的で使われます。子宮がんや卵巣がんの治療に使われる抗がん剤は、副作用として手足の痺れがあらわれることが多く、対処法もない状態でした。近年では、漢方薬の「牛車腎気丸」が抗がん剤による手足の痺れを軽減することがわかっており、大腸がんや肺がんなどの抗がん剤による手足の痺れにも牛車腎気丸が利用されています。その他にも、抗がん剤による口内炎には「半夏瀉心湯」、食欲不振には「六君子湯」、全身倦怠感には「十全大補湯」や「人参養栄湯」が使われます。

 

がん細胞が免疫を抑制する

健康な人でも絶えずがん細胞が体内で発生していますが、免疫細胞ががん細胞を排除するので大きくならずに済んでいます。しかし、がん細胞の中には、免疫細胞にブレーキをかけるPD-L1というリガンドを発現することで、免疫細胞から攻撃を受けないようにするものが存在します。がん免疫療法で使われる「免疫チェックポイント阻害薬」は、がん細胞に対する免疫のブレーキを解除することでがんを死滅させます。そのため、抗がん剤の治療効果を高めるためにも、がんに対する免疫を活性化させることが重要です。

 

がん細胞に対する免疫を活性化させる漢方薬

漢方薬の中には、免疫機能を活性化させるものも存在します。補益剤の一つである補中益気湯には、免疫細胞の一種であるヘルパーT細胞のバランスを調節する働きがあり、感染症の悪化を予防する効果が期待されています。また、人参養栄湯には造血促進作用と自己免疫抑制作用があるとされ、マウスを用いた検証では自己免疫疾患での生存率の延長が報告されています。

免疫を抑制するがん細胞に対しての検証では、6種類の漢方成分においてがん細胞増殖の抑制、5種類の漢方成分でがんに対する免疫を活性化させる働きが確認されています。また、十全大補湯や小柴胡湯では、抗腫瘍性リンパ球の増加、免疫抑制細胞の減少などが確認されており、がん細胞に対する免疫を活性化させる漢方成分の同定が進んでいます。

 

漢方薬の研究によって新しいがん治療の可能性も

がん細胞には、免疫細胞にブレーキをかけるものが存在し、抗がん剤の効果が十分にあらわれないこともあります。がん免疫療法における「免疫チェックポイント阻害薬」は、がん細胞に対する免疫細胞のブレーキを外すことで、抗がん作用をあらわします。漢方薬にも、がん細胞に対する免疫を活性化させるものも存在し、漢方薬の研究が進むことでがん免疫療法の発展につながる可能性もあります。

 

参考URL

漢方薬による免疫がん微小環境の改善と作用機序の解明,厚生労働省科学研究データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/20857

がん治療と一緒に漢方を,日本漢方生薬製剤協会
https://www.nikkankyo.org/kampo/colume/pdf/016.pdf

がん薬物療法と医療用漢方製剤,公益社団法人日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/note/13%EF%BC%8E%E3%81%8C%E3%82%93%E8%96%AC%E7%89%A9%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%A8%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%94%A8%E6%BC%A2%E6%96%B9%E8%A3%BD%E5%89%A4/

がんと免疫系,京都大学大学院医学研究科所属がん免疫総合研究センター
https://www.ccii.med.kyoto-u.ac.jp/research/cancer-and-the-immune-system/

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