がん免疫療法コラム

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腸内細菌の種類でがんを予想する

腸内細菌と健康は密接に関係している

腸管には、約1000種類以上の腸内細菌が100兆個も存在すると言われています。腸などの消化管は飲食物によって病原体の脅威に晒されています。そのため、腸には、体内の70%の免疫細胞が集中しており、健康維持に重要な役割を果たしています。抗生剤の投与や生活習慣の乱れなど、何らかの理由によって腸内細菌のバランスが崩れると腸管免疫に問題が生じることがあります。免疫機能を上げるためにも腸内細菌のバランスを保つことが重要です。

膵臓がん患者に特徴的な腸内細菌種

がんを発症することで腸内細菌のバランスにも変化が生じることがあります。近年の研究では、日本人の膵臓がん患者の口腔内細菌や腸内細菌には、特徴的な菌種が存在することが発見されました。

健康な人の腸内細菌と比較検討した結果、膵臓がん患者には、口腔内細菌で18種類、腸内細菌では30種類の特徴的な菌種が発見されています。また、慢性膵炎や膵管内乳頭粘液性腫瘍など膵臓がんリスクがある患者と膵臓がん患者では腸内細菌の構成が似ていることもわかっています。

 

腸内細菌を見ることでがんの発見や薬剤効果の予測ができる

膵臓がんリスクのある患者と膵臓がん患者との腸内細菌嚢が類似していることが報告されており、腸内細菌を解析することでがんの早期発見に役立つと考えられています。口腔内細菌や腸内細菌を機械学習法という解析法を用いて膵臓がんの発症を高い確率で予想できました。従来の血液検査による腫瘍マーカーと口腔内細菌、腸内細菌を併用することで、従来の血液マーカー単独よりも膵がん発症の予測精度が高まることも確認されています。

腸内細菌を解析することで、早期発見以外にもがん治療薬の治療効果を予測することも可能です。治療前の膵臓がん患者の腸内細菌と抗がん剤治療後の死亡率との関連を調べた研究では、酪酸や酢酸、短鎖脂肪酸を産生する菌種が多かったグループでは抗がん剤治療の生存率が長いことが確認されました。

 

がん免疫療法のバイオマーカーになる可能性も

酪酸や酢酸、短鎖脂肪酸を産生する菌種は、免疫の恒常性を保つ働きがあることが知られており、がんに対する免疫についても機能を維持する可能性があります。がんに対する免疫機能を利用してがん治療する「がん免疫療法」でも、腸内細菌の菌種を確認することで治療薬の効果を予測できる可能性があります。

 

参考URL

膵臓がんや予後と関連する口腔内細菌・腸内細菌種を発見〜膵がんの早期発見等のため新たな腫瘍マーカーの可能性〜,東京医科大学,国立国際医療研究センター,欧州分子生物学研究所
https://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2022/20220419.html

腸内細菌嚢と免疫の関わり,日本臨床免疫学会会誌(Vol.40 No.6)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsci/40/6/40_408/_pdf

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