がん免疫療法コラム

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光免疫療法はがん免疫療法の新たな光となりうるか? 《Part.1》 Vol.19

今回を含め3回にわたり光免疫療法を取り上げます。最近、色々なメディアで光免疫療法という言葉を目にしたり、耳にする機会が増えて来たように思います。仕組みがユニークでありながらも分かりやすく、そして日本人が開発した技術であることが、開発段階にも関わらず注目されている理由の一つだと思います。

実は、本コラムで取り上げるべく準備はしていたのですが、他の記事を優先するなどした関係でタイミング的に遅くなってしまいました。それでは早速、見ていきましょう。

 

◆光免疫療法とは

光免疫療法は、米国立がん研究所(NCI)の主任研究員 小林久隆医師が開発した免疫療法です。201111月に「ネイチャー・メディスン」で発表され、これを機に世に知れることになりました。「抗体」と「IR700」という2つの物質を組み合わせたものを投与し、最後に「光」を照射してがん細胞を破壊します。がん細胞を破壊する過程はシンプルですが、今までに無いものであり、副作用も少ないと言われています。

次は、この治療法で使われる2つの物質と光源についてです。

 

◆核となる3要素とその役割

□抗体

「抗体」は、以下に示す「IR700」をがん細胞が存在する場所まで運搬させるために使われます。つまり、「IR700」は担体としての役割を担っています。具体的には、分子標的薬(がん細胞などの表面にあるタンパク質やペプチドなどの抗原を標的として、そこに結合して攻撃を行う薬剤)が使われています。分子標的薬を使っているのは、予めがん細胞に結合することが確かめられたものを使った方が効率的だからです。現状では、EGFR(上皮成長因子受容体)に結び付く抗体である「セツキシマブ」を使った薬剤を用いて臨床試験が行われています。

IR700

近赤外光を吸収する性質を持つ「フタロシアニン」という、道路標識新幹線の車体の青色部分の塗装などに使われている化学物質が基になっています。これを改良し、光に当たると性質が変わるようにしたものが、「IR700」です。この性質の変化が、がん細胞にダメージを与えます。

□近赤外線

赤外線カメラや家電用のリモコンなどの赤外線通信として使われています。身近な存在であり、人体には無害です。「光」を照射することで薬効が発現します。つまり、「光」が効果発現のスイッチ的な役割を担っています。

 

◆使用方法と作用

「抗体」に「IR700」を結合させたものを作製し、それを静脈から体内に注入します。「抗体」が、がん細胞の表面に発現している抗原を目印として「IR700」をがん細胞まで運びます。そして最後に「近赤外線」を当てます。この光が合図となり、「IR700」が一気に変形し始め、「抗体」と抗原全体が変形または凝集することにより、がん細胞の細胞膜に傷を付けます。

生体に毒性を示さない近赤外線を用い、意図的に薬効発現のスイッチをONにすることができる点は非常にユニークです。しかし、一方で既存の「抗体」にある物質を結合させるという、既に実用化されている技術を積極的に取り入れています。核心部分は新規性を、それ以外は応用と実用性を重視している点は実にスマートです。

 

以上のように「光」を当てることが薬効発現のスイッチとなり、「IR700」の化学的な性質の変化と変形という物理的変化を利用して抗腫瘍効果を発揮することが、この光免疫療法の特徴です。

しかし、これのどこが免疫療法なのか、殺細胞性の抗がん剤ではないかと疑問を持たれ方もいらっしゃると思います。これについては、次回ご説明したいと思います。

(参考文献については最後にまとめて提示します)

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