がん免疫療法コラム
イミフィンジ®を用いた限局型小細胞肺がんに対する臨床試験
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はじめに
小細胞肺がん(SCLC)は、肺がんの中でも特に悪性度が高く、治療が難しいとされています。特に限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)は、全SCLC診断の約30%を占めており、標準治療である化学放射線療法(CRT)を受けても再発しやすく、予後不良なものとして知られており、診断後の5年生存率はわずか15~30%とされています。
厚生労働省は、日本国内での患者数が5万人未満で、アンメットニーズが高い疾病の治療を目的とした医薬品等に対して希少疾病用医薬品指定を行っており、この度、イミフィンジ®(一般名:デュルバルマブ)が、LS-SCLCの治療薬として希少疾病用医薬品の指定を受けました。
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イミフィンジとは
イミフィンジは、ヒトPD-L1に結合するヒトモノクローナル抗体であり、腫瘍の免疫回避機構を抑制し、抗腫瘍免疫反応を誘発するものです。イミフィンジは、切除不能なステージIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)や進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)、転移性非小細胞肺がんなどの治療薬としてすでに承認されており、胆道がんや肝細胞がんに対する治療薬としても複数の国で承認されている医薬品になります。
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第Ⅲ相ADRIATIC試験の結果
第Ⅲ相ADRIATIC試験では、イミフィンジが同時化学放射線療法後のLS-SCLC患者において、プラセボに対し全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の改善を示す結果となりました。
最新のデータによれば、イミフィンジ群はプラセボ群に比べ死亡リスクを27%低下させ(OSハザード比 [HR] 0.73;95%信頼区間 [CI]0.57~0.93;p=0.0104)、OSの推定中央値はプラセボ群の33.4か月に対し、イミフィンジ群は55.9か月となりました。
また、PFSについても、イミフィンジ群はプラセボ群と比較して病勢進行または死亡のリスクを24%低下させ(PFS HR 0.76;95%CI 0.61~0.95;p=0.0161)、PFSの推定中央値はプラセボ群の9.2か月に対し、イミフィンジ群は16.6か月となっています。
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今後の展望
ADRIATIC試験は、LS-SCLCにおいて画期的な結果を示した世界初の免疫療法に関する国際共同第Ⅲ相試験です。今回ご紹介したADRIATIC試験の結果は、従来のES-SCLCにおけるイミフィンジの優れた治療成績に基づいています。これにより、治癒を目指した免疫療法をより早期のステージのSCLCに導入できる可能性が世界で初めて示されました。
また、過去に実施されたPACIFIC試験、POSEIDON試験、CASPIAN試験に加えて、今回のADRIATIC試験の結果によって、化学放射線療法後の早期肺がん治療におけるイミフィンジの役割に対する期待が高まっています。
この一連の試験結果を受け、イミフィンジがLS-SCLC治療において重要な役割を果たすことが今後も引き続き期待されます。
5.参考
アストラゼネカ
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2024/2024062001.html
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2024/2024041601.html