がん免疫療法コラム

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フレイルとがん治療

フレイルの定義

フレイルは、高齢になるとさまざまな身体、精神機能の低下と予備能力の低下によって起きる老年症候群です。フレイル状態は、いわゆる「衰弱」「老衰」という日本語訳がされることもありますが、医療的介入をすることで再び健常な状態に戻せる段階にあります。フレイルは、生活機能障害、免疫異常、神経内分泌異常などが複合的に関与しており、脳卒中や心不全、COPDなどの発症についてもフレイルが関係しています。

フレイル状態の高齢者では、身体能力の低下に伴って転倒による骨折などによって寝たきりの原因になることもあるので、早期の対策が健康寿命を伸ばすために重要です。

 

フレイルは現代日本の避けては通れない課題

令和5年度の日本の高齢化率は29%であり、75歳以上の後期高齢者の人口は1936万人にものぼります。日本は、世界で一番の長寿国であり、元気な高齢者が増えている一方で、死亡するまでに介護が必要な期間が男性で約9年、女性で13年と長期間であるため社会的課題となっています。

現在、後期高齢者が要介護状態になる原因1位はフレイルであり、フレイルを早期に対策することは高齢化が進む日本では必要なことの一つです。

フレイルには、身体的、精神心理的、社会的要因があり、医師や看護師、介護士、地方自治体などさまざまな職種や公的機関が協力しながら対応していくことが求められています。

 

フレイルは免疫にも影響する

フレイルはさまざまな病気の発症にも関連していることが知られています。

特に、栄養状態の悪化からくる筋肉量の低下は、免疫細胞の減少につながることも報告されており、がん免疫の低下によるがんの発症にもつながる可能性があります。

そのため、がん免疫の活性化による治療を目指すがん免疫療法も、フレイル状態だと免疫機能が低下しているため十分な効果が期待できない可能性があります。

 

がん治療におけるフレイル対策

フレイル状態だと免疫機能や体力が低下しているため、がん免疫療法を含むがん治療の効果が十分に発揮できない可能性もあります。そのため、フレイルにならないように予防する、フレイルに早期に介入するなどの対策が必要です。フレイル対策にはタンパク質やビタミンDの積極的な摂取、適切な運動が重要だと考えられており、場合によっては栄養療法やリハビリテーションなどの医療的介入も必要になることもあります。また、がん治療とフレイル対策を並行して行うことで治療効果を高めるかもしれません。

 

参考URL

サルコペニアががん免疫に与える影響についての基礎的研究
https://www.ms-ins.com/welfare/document/list/pdf/2020/2020_2_15.pdf

フレイルの意義,日老医誌 2014;51:497―501
https://jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_6_497.pdf

第1章 高齢化の状況,内閣府

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