がん免疫療法コラム

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がん治療の新時代、免疫療法と個別化ワクチンの融合

がん治療における免疫療法は、近年注目を集めています。特に、個々の患者に合わせて作られる「個別化ネオアンチゲンワクチン」とPD-1阻害剤を組み合わせた最新治療が、肝細胞がんの進行段階で新たな希望を見せており、その結果がNature Medicine誌で発表されました。

 

はじめに 

免疫療法は進行性の肝細胞がん(HCC)において重要な治療選択肢となっています。この治療法は、体の免疫システムを活用してがん細胞を攻撃することにより、従来の治療法では難しかったがんの制御を可能にします。

 

免疫療法の進展

近年、免疫チェックポイント阻害剤やワクチン療法など、免疫療法の進展が著しく、これらはがん治療における新たな希望となっています。特に、PD-1阻害剤は一定の効果を示していますが、HCCにおいては限定的な反応しか見られていないのが現状です。

 

肝細胞がん(HCC)に効果的な免疫療法

HCCは世界中でがん関連死の主要な原因の一つであり、進行性の症例では5年生存率が10%未満と非常に低いです。HCCは免疫抵抗性が高く、それぞれ低いT細胞浸潤と腫瘍変異負荷(TMB)が特徴です。これらの特徴が、免疫療法への反応を制限する要因になっています。

この治療課題に対し、米ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターのJaffee氏らは、免疫療法に個別化がんワクチン(PTCV)を追加することで、肝細胞がんが縮小する患者の割合が、免疫療法のみを受けた場合の約2倍になる驚くべき研究結果を発表しました。

 

主な研究と試験内容

個別化ネオアンチゲンワクチンとは何か

 個別化ネオアンチゲンワクチン(PTCV)は、がん細胞特有の変異に基づいて作られるワクチンです。このワクチンは、患者さん一人ひとりの生体がん細胞の取得と遺伝情報の分析から始まります。そこから、免疫系が認識可能な新規のがん抗原(遺伝子変異により新たに生じたネオアンチゲン)を産生している遺伝子を特定します。最終的にネオアンチゲンをコードするDNAを含む個別化ワクチンを作成し、投与することでがん細胞を攻撃する免疫反応を引き起こすことが可能になります。

 

ペムブロリズマブとの併用療法

 ペムブロリズマブは、PD-1阻害剤と呼ばれる免疫チェックポイント阻害薬の一種で、がん細胞が免疫系から逃れるのを防ぐことで、体の免疫応答を強化します。

本研究では、PTCVとペムブロリズマブを組み合わせることで、がんに対する免疫反応をさらに強化し、治療効果を高めることを可能にしました。

 

第1/2相試験の概要と目的

この臨床試験は、進行性肝細胞がん(HCC)を持つ36人の患者さんを対象に多施設で実施されました。主な目的は、PTCVとペムブロリズマブ併用療法の安全性と免疫原性を評価することです。また、治療の有効性や実施可能性も二次的な評価項目として検討されました。

 

研究結果のハイライト

安全性と免疫原性の評価結果

HCCに対するPTCVとペムブロリズマブ併用療法が試され、関連する副作用として最も一般的だったのは注射部位の反応で、参加者の約41.6%に見られましたが、重度の有害事象は報告されませんでした。

 

肝細胞がんにおける治療効果と実現可能性の評価

この試験では、治療の実現可能性と効果も重要な評価項目でした。試験結果によると、併用治療を受けた患者の反応率(ORR)は30.6%であり、治療後の検査でがん細胞が見つからない完全奏効(CR)は8.3%の患者で確認されました。

これは、PD-1阻害剤単独療法と比較して極めて高い応答率であり、新たな治療法の可能性を示唆しています。この結果は、新抗原特異的なT細胞応答が確認された患者において、特に顕著でした。

PD-1阻害剤は通常、既存の腫瘍特異的免疫応答を再活性化させるのに対し、PTCVは新たな腫瘍特異的免疫応答を誘導することで、PD-1阻害剤の効果を高める可能性があります。併用療法により、相乗効果が発揮された結果だと著者らは考察しています。

 

今後の臨床試験と治療戦略の発展

本研究はPTCVがPD-1阻害剤の効果を高める可能性を示しており、進行性HCCに対する新たな治療オプションとしての可能性を開くものでした。

今後の臨床では、この個別化ワクチンがPD-1阻害剤単独療法と比較し、どの程度効果的かを追加検証する必要があります。また、がんの免疫環境や患者さんの免疫状態など、治療効果に影響を与える他要因も考慮に入れることが重要になってきます。このような研究を通して、今後より効果的な治療戦略の開発が期待されています。

 

参考文献

Yarchoan, M. et al. Personalized neoantigen vaccine and pembrolizumab in advanced hepatocellular carcinoma: a phase 1/2 trial. Nat. Med. 30, 1044-1053 (2024).

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