がん免疫療法コラム

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従来の”免疫システムから逃れるがん”を治療する新技術

1.はじめに

がん細胞は、がんが発覚する数か月前や数年前に生じると考えられがちですが、実際には毎日のように数百から数千ものがん細胞が体内で生まれては消えていっています。体内でがん細胞が生じてもがんにならないのは、体の免疫系がこれらのがん細胞を排除しているからです。その中心となるのが「細胞傷害性T細胞」と呼ばれるもので、がん抗原を認識してがん細胞を攻撃することで、がん細胞から体を守っています。しかし、この免疫系から逃れるがん細胞が現れると、最終的にはがんを発症してしまうということになります。

 

2.免疫療法の実際

がん細胞が免疫系から逃れるために用いる手段の一つが「MHCクラスI分子を減少させる」ことです。MHCクラスI分子はほぼすべての細胞表面に存在しています。細胞ががん化すると、その細胞が持っているMHCクラスI分子が細胞傷害性T細胞に提示されます。しかし、多くのがんはMHCクラスI分子を減少させて免疫系から逃れているということが分かっています。このため、がん細胞のMHCクラスI分子を増やすことで、免疫系を活性化させるという発想は以前からありましたが、治療に応用できるような有効な技術はまだありません。また、MHCクラスI分子を増加させる既存の薬剤はあるのですが、その特異性は低く、副作用が強いため実際の治療には使えませんでした。

 

3.研究が進んでいる解決策

最近の研究で、がん細胞におけるMHCクラスI分子の低下の主要因が「NLRC5」の減少であることが発見されました。多くのがん細胞では「NLRC5遺伝子」にメチル化修飾がかかり、NLRC5の発現量が増加しません。このため現在では、NLRC5遺伝子のメチル化を解除し、NLRC5を活性化させる新技術の研究が盛んに行われています。

 

4.最新の研究成果

北海道大学の研究グループが開発した『TRED-Iシステム』は、がん細胞のNLRC5の発現を回復させ、MHCクラスI分子の発現量を増加させることができます。動物モデルを使った実験で、『TRED-Iシステム』が細胞傷害性T細胞の応答性を大幅に向上させ、がん治療効果を示しました。さらに、免疫チェックポイント阻害剤に耐性のあるがんにも高い治療効果が確認されました。このシステムは、従来の免疫療法と併用することでさらに大きな治療効果が期待でき、多くの種類のがんに応用可能と考えられます。

5.まとめ

がん細胞ではNLRC5遺伝子がメチル化修飾を受けていて発現できず、結果としてMHCクラスIの発現量が低下してしまいます。『TRED-Iシステム』は、NLRC5遺伝子のメチル化を正常化させ、NLRC5遺伝子の発現を促すシステムです。『TRED-Iシステム』によりMHCクラスIの発現量が増加し、細胞傷害性T細胞ががん抗原を認識できるようになりがん細胞を攻撃します。『TRED-Iシステム』は、従来とは異なる新しい原理に基づいたがん免疫療法を可能にし、多種多様ながん種に対する治療への応用が期待できます。

6.参考

  1. 北海道大学 https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/02/post-1389.html
  1. PNAS https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2310821121

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