がん免疫療法コラム
抗がん剤の副作用である痺れに漢方薬が有効である可能性
がん治療薬の副作用としての痺れ
抗がん剤の副作用の一つに「末梢神経障害」があります。
末梢神経障害は、主に化学療法で使われる抗がん剤でみられる副作用であり、薬剤によっては高頻度でみられるため治療を中止したり、治療法を変更する原因になるため対策していくことが重要です。
末梢神経障害の症状としては、手足の痺れや痛み、筋力の低下などがみられます。
がん免疫療法でも痺れのリスクがある
がん免疫療法で使われる「免疫チェックポイント阻害薬」にも末梢神経障害がみられることがあり、手足の痺れが副作用として発現することもあります。
特に、免疫チェックポイント阻害薬にみられる「免疫関連有害事象」の中でも、手足の痺れなど末梢神経障害は高頻度でみられます。
通常の抗がん剤治療と同様に対策しないと治療継続が難しくなる可能性があるので注意が必要です。
痺れに対して漢方薬が使われることもある
免疫チェックポイント阻害薬による治療によって、手足の痺れなどがみられた場合、治療を中止したり、重症度によってはステロイド治療を行ったりすることがあります。
しかし、免疫チェックポイント阻害薬が患者さんにとって最後の選択肢の場合もあるため、副作用の予防、治療法の研究は非常に重要です。
大腸がん治療に使われる「オキサリプラチン」は、末梢神経障害が高頻度でみられる抗がん剤であり、治療計画の変更が必要になる場合もあります。
オキサリプラチンの末梢神経障害に対して、有効な予防法、治療法は確立されていませんでした。しかし、漢方薬によって末梢神経障害が改善したと臨床研究で報告されています。
オキサリプラチンの末梢神経障害に対して、漢方薬の「牛車腎気丸」を使用することで、血流量が増加し、急性の冷感過敏(冷たい水や空気に触れて手足の痺れや痛みが強くなる)を予防・改善するものと考えられています。
がん免疫療法の副作用対策に漢方薬
現在、がん治療でおきる手足の痺れに対して、漢方薬を服用することで改善がみられたと報告された臨床研究がいくつもあります。
しかし、抗がん剤の種類によってはエビデンスが乏しいこともあり、末梢神経障害に対する漢方薬の効果についてはさらなる検証が必要です。
近年では、がん免疫療法は、化学療法や放射線療法、外科手術に並ぶがん治療の柱となっています。がん免疫療法ががん患者さんの最後の希望となることもあり、治療を継続するためにも副作用の対処法は重要です。
古くから日本人の健康を守ってきた漢方薬が、がん免疫療法の副作用を軽減する可能性もあるため、研究が求められています。
参考URL
漢方薬と抗がん剤誘発神経障害,オキサリプラチンによる末梢神経障害に対する牛車腎気丸の効果に関する基礎的エビデンス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/143/3/143_126/_pdf
免疫チェックポイント阻害薬の神経・筋副作用とその対策
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/37/4/37_526/_pdf