がん免疫療法コラム

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膵臓がん再発防止へ「ELI-002 2P」ワクチンの新たな希望

米国のテキサス大学、消化器腫瘍学准教授であるShubham Pant氏らによる小規模な臨床試験において、膵臓がんに対する実験的な治療ワクチンが有望であることが発表されました。この治療は現在、「ELI-002 2P」として知られており、KRAS変異を有する固形がんに焦点を当てています。試験はElicio Therapeutics社の支援を受けて行われました。詳細は1月9日に『Nature Medicine』に掲載され、膵臓がん治療の新たな可能性として注目を集めています。

 

膵臓がんとその挑戦 

膵臓がんは、症状がわかりにくく進行が静かなため、「サイレント・キラー」とも呼ばれています。このがんは早期に発見することが難しく、発見されるとすでに進行していることが多く、治療の選択肢が制限される傾向にあります。そのため、膵臓がんは他のがんよりも特に難しい部類に入ります。米国がん協会(ACS)によると、米国では年間約6万4,000人が膵臓がんと診断され、約5万5,500人がこの病気で亡くなっています。膵臓がんは全体のがん死亡の約7%を占め、死亡率が高いがんの一つとされています。

 

KRAS遺伝子の変異と膵臓がん 

KRAS遺伝子は、膵臓がんの発症に深く関与しています。特にKRAS遺伝子の変異は、膵臓がんの発症において重要な役割を果たし、この変異を持つ患者はがんの進行が早い傾向があります。この変異は、多くの膵臓がん患者に共通する特徴です。

 

新たな希望 :ELI-002 2Pワクチンとは?

ELI-002 2Pワクチンは、新しいタイプのがんワクチンです。このワクチンは、膵臓がんの再発を防ぐことを目的として開発され、KRAS変異を有する固形がんを標的として攻撃、再発を予防する設計になっています。ELI-002 2Pワクチンは、免疫細胞のT細胞にKRAS変異を認識させて破壊するように仕向けています。このような作用機序によりがん細胞の成長を抑制する効果を発揮します。

 

臨床試験の最新結果 

最新の臨床試験によれば、ELI-002 2Pワクチンは膵臓がん患者の免疫応答を促進し、がんマーカーの低下に成功しました。ワクチンを受けた患者の84%で、期待されていたKRAS変異に特異的なT細胞反応が観察されました(腫瘍やその関連DNAの存在を示すバイオマーカーの低下)。特に、5.0mgと10.0mgの投与量を受けた患者では、この反応が100%に達しました。また、ワクチン接種後の患者の生存率も改善されたと報告されています。これらの結果は、ワクチンが膵臓がんの再発を予防し、生存期間を延長できる可能性を示しています。

 

ELI-002 2Pワクチンの安全性 

ワクチンの副作用としては、倦怠感が24%、注射部位での反応が16%、筋肉痛が12%の割合で報告されました。しかし、治療を中止するような重度の副作用や死亡例は見られませんでした。このワクチンは自己免疫の活性化を目指す作用機序を持つため、安全性が高いと考えられています。そのため、多くの患者にとって有望な治療選択肢となる可能性があります。ワクチンの副作用は一般的に軽度で一時的なものであり、重篤な副作用は稀です。Pant氏はこの結果について、「ELI-002 2Pの安全性プロファイルは良好である」と述べています。

 

未来への展望 

現在、ELI-002 2Pワクチンの第2相臨床試験は2024年後半に開始予定です。この試験では、さらに多くのKRAS変異を標的とすることが計画されており、その結果が期待されています。Pant氏は「膵臓がんは再発すると治癒が困難であり、未解決の医療ニーズがある領域であるため、これらの結果は非常に期待できる」と述べ、喜びを表しています。このワクチンが今後の膵臓がん治療の新たな基準となる可能性もあります。第2相臨床試験の結果次第では、膵臓がんと闘うすべての人々にとって、がんとの闘いにおける新たな希望となる治療になるかもしれません。

 

参考文献

Pant, S. et al. Lymph-node-targeted, mKRAS-specific amphiphile vaccine in pancreatic and colorectal cancer: the phase 1 AMPLIFY-201 trial1.
Nat Med 30, 531-542 (2024).
https://www.nature.com/articles/s41591-023-02760-3

Pant et al. (2024) reported a significant milestone in the treatment of KRAS-mutated pancreatic and colorectal cancers with the development of a lymph-node-targeted, mKRAS-specific amphiphile vaccine
https://www.mdanderson.org/newsroom/vaccine-demonstrates-potential-in-delaying-relapse-of-kras-mutat.h00-159694389.html

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