がん免疫療法コラム

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大建中湯は免疫に作用することで炎症性腸疾患を改善

がん治療における漢方の役割

日本では、古くから漢方薬が医療の中心でしたが、明治時代に入って近代化を迎えるにあたり、漢方薬は医療の中心から外れていきました。

しかし、近年では、漢方薬の効能が見直されるようになり、漢方薬が保険適応にもなりました。

がん治療においても漢方薬が使われるようになり、副作用の軽減やがん治療後の体力回復にも効果が期待され、がん治療を支えるものとして漢方薬が注目されています。

 

臨床現場における大建中湯

大腸がんに対する開腹手術では、術後の腸閉塞や癒着などの問題が生じることがあります。

漢方薬の「大建中湯」は、臨床現場でもよく使われており、開腹手術後の腸閉塞を予防する効果が期待されています。

大建中湯は、消化管運動を亢進させ、便秘や下腹部痛、腹部膨満感などの症状を和らげる漢方薬です。

近年の研究では、腸管壁内の神経組織で産生される体内物質を増やし、腸管の血流を増加させることが確認されています。

大建中湯は、開腹手術による腸閉塞の予防以外にも、腸管の動きを活発化させて、がん治療に伴う便秘や下痢などの症状を和らげる効果も期待できます。

大建中湯は免疫細胞に作用することで炎症性腸疾患を改善

大建中湯の効能ですが、炎症性腸疾患を発症したマウスに大建中湯を投与した実験では、下痢症状の緩和と体重減少の抑制が認められ、腸の炎症が軽減することが示されました。

さらに大腸で特定の腸内フローラ(腸内細菌叢)を増加させ、その腸内細菌叢が産生するプロピオン酸が増加し、プロピオン酸が腸管バリア機能を担う免疫細胞を刺激することで、大腸を健全に保ち、炎症から腸管を保護することが明らかになりました。

 

漢方薬の今後の可能性

漢方薬には、がん治療による副作用の軽減が報告されているものがあり、伝統的な医療と最新の医療の融合が新しい効果を生み出す可能性を秘めています。今回、大建中湯が免疫細胞を刺激することで腸を健全に保ち、炎症から腸管を保護することが明らかになりました。このような作用機構を理解し、免疫細胞の能力を最大限に活用することで、より効果的な治療が可能になるものと期待できます。

 

参考URL

大建中湯の腸管運動に対する効果,日外科系連会誌37(4):719-723,2012
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcs/37/4/37_719/_pdf/-char/ja

炎症性腸疾患における漢方「大建中湯」の作用機構を解明-漢方の効能が科学的に明らかに-,理化学研究所
https://www.riken.jp/press/2022/20220602_1/index.html

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