がん免疫療法コラム
核医学治療の効果を増大させる薬剤
沈黙の臓器の生存率は低い
皮膚がんのように自分の目でわかるもの、消化器系のがんのように自覚症状の出やすいものは、早期発見もしやすく、比較的生存率が高いがん種も存在します。
しかし、肝臓がんや胆のうがん、肺がんなどは、症状が現れにくく、腫瘍マーカーなど血液検査の数値によって発見されることが大半です。
血液検査の数値が上昇した段階では、がんが進行している状態であり、治療を難しくしている要因です。
また、現状、沈黙の臓器で発症したがんは、がんに対して選択的に効果を発揮する薬剤が少ないことも、生存率を低下させる要因としてあります。
治療と診断を一体化した医療技術
特定のがん種を選択的に治療する方法として「核医学治療」というものがあります。
核医学治療は、放射性同位元素をがん病巣に集中させることによって、放射性同位体が発する粒子線の働きでがん細胞を死滅させます。
選択的に病巣を治療する核医学治療は、少ない副作用で高い治療効果を期待できることがメリットです。
近年では、がんの核医学診断と核医学治療を一体化させた手法(ラジオセラノスティクス)が研究されています。
核医学治療の効果を増大させる薬剤の開発
ラジオセラノスティクスは、診断用の放射性薬剤と治療用の放射性薬剤を同時にがんへ送ることで、早期発見治療が可能となります。
これまで、国内で唯一、製造方法が確立されていた211At標識薬剤は、がんに対して十分に集まらない、すぐに消失するという課題が存在しました。
しかし、近年では、血中アルブミンと結合しやすいように開発した211At標識薬剤が、マウスの実験において、がんに対する高い集積性とがんへの持続時間の延長、より高い治療効果を示しています。
アルブミンは、血液中の水分を保持し、体内の色々なものと結合することで、目的地に必要な栄養素や薬剤を目的地に運ぶ役割を持っています。
血中のアルブミンと結合するように開発した放射性薬剤は、放射性同位体ごとに集積しやすい臓器へと運ばれるため、核医学治療の進歩が期待されています。
がんの早期発見、早期治療の技術は進歩している
がんの早期発見、早期治療が期待できる「核医学治療」は、さまざまな放射性同位体の集積性を高めた薬剤が開発され、がんの早期発見、早期治療に役立てることも可能です。
核医学治療は、がん免疫療法と同様に、難治性がんに対して有効的な治療法になる可能性もあります。
参考URL
がんの標的 α 線治療の効果増大を目指したラジオセラノスティクス用薬剤を開発
―より効果的な α 線治療への応用に期待-,金沢大学 新学術創成研究機構,公立大学法人福島県立医科大学
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/131182
「見つけにくいがん・薬が届きにくいがん」にどう対処するか?見つけにくく届けにくいからこそ、早期発見&早期治療が肝要,京都薬科大学
https://www.kyoto-phu.ac.jp/Portals/0/resources/education_research/project4/pdf/2019newsletter1_public.pdf
アルブミンの働き,一般社団法人日本血液製剤協会
http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/albmen/alb_02.html