がん免疫療法コラム

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ドラッグデリバリーにはどの抗体を用いる?

1.はじめに

細胞レベルでの治療法の進歩は、抗体の研究と密接に結びついています。これらの分子は、がんや免疫疾患、感染症など、多岐にわたる疾患に対する治療法の新たな選択肢となっています。その中でも、抗体がもたらす精密な細胞選択的な治療は、医学の未来を変える可能性を秘めています。

 

2.臨床利用されている抗体

DDS(Drug Delivery System)に使用される抗体は多岐にわたり、治療の対象や目的によって異なります。以下は一般的ながん治療において使用される抗体の例です。

  • リツキシマブ(Rituximab): CD20と呼ばれるB細胞表面の抗原を標的とし、悪性リンパ腫の治療に使用されます。
  • トラスツズマブ(Trastuzumab): HER2陽性の乳がん治療に使用される抗体で、HER2受容体を標的とします。
  • セツキシマブ(Cetuximab): EGFRを標的とし、大腸がんや頭頸部がんの治療に利用されます。
  • ベバシズマブ(Bevacizumab): 血管新生を抑制することで腫瘍の成長を阻害し、多くのがん治療に用いられます。

 

3.研究が進んでいる抗体

研究段階であり、まだ臨床利用には至っていないが、注目を集めている抗体もいくつかあります。これらはがん治療だけでなく、他の疾患や治療法にも関連しています。

  • CD47抗体:CD47は免疫系によるがん細胞の攻撃を逃れるメカニズムとして知られています。CD47抗体はがん免疫療法において、免疫系の活性化を促進することが期待されています。
  • TIM-3抗体:TIM-3はT細胞の機能を制御するタンパク質で、がん免疫療法において注目を集めています。TIM-3抗体は免疫チェックポイント阻害薬として開発が進んでいます。
  • LAG-3抗体:LAG-3もまたT細胞の活性を制御する免疫チェックポイントであり、がん治療の対象となっています。LAG-3抗体は免疫応答を増強することが期待されています。
  • OX40抗体:OX40はT細胞の活性化に関与しているたんぱく質で、がん免疫療法において活用できる可能性があり、現在研究が進んでいます。

 

4.よく研究されている抗体「CD44」

基礎研究の分野ではCD44抗体をよく目にします。CD44に関しては多様な研究が行われており、がん治療やDDSの分野で注目を集めています。CD44はがんの進行や転移に関与しており、その細胞選択性ががん治療に応用できる可能性があり、現在研究が進んでいます。

  • がん診断: CD44はがん細胞の表面に発現することが多いため、CD44を標的とした診断法が研究されています。CD44を用いたがんマーカーの検出ががんの早期診断や治療効果のモニタリングに役立つ可能性があります。
  • DDSの標的: CD44は正常組織でも発現しているため、特異的なCD44の変異体(CD44v)や他の分子との結合を利用して、がん細胞に特異的に薬物を送達するDDSが研究されています。
  • がん治療への応用: CD44を標的とした抗体療法やその他の治療法が研究されています。CD44の機能を阻害することでがんの進行を抑制する研究も進行中です。

ただし、CD44は正常な組織にも存在するため、特異性の課題を克服する必要があります。そのため、CD44を標的とする治療法はまだ臨床利用には至っていないものの、進行中の研究が将来的な治療法の開発につながる可能性があります。

 

5.まとめ

抗体療法は、特定の表面抗原をもつ疾患細胞に正確に薬物を届け、正常細胞に対する副作用を最小限に抑えることが期待されています。広範でありながらも高い特異性を持つ抗体は、患者に対する治療効果の向上を示しており、臨床医学において新たな治療法を切り開いています。

 

6.参考

  1. 日経メディカル(リツキシマブ)(https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/564ebde85595b3d50b796733.html
  2. 日経メディカル(トラスツズマブ)(https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/565d37855595b3d50b79676c.html
  3. 日経メディカル(セツキシマブ)(https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/5649c57b5595b3c10f7966eb.html
  4. 日経メディカル(ベバシズマブ)(https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/564e84f75595b3ac0b7967d4.html
  5. Kasai S, et al. CD44 高発現腫瘍と炎症メディエーター. 山梨医科学雑誌, 2017. (https://cir.nii.ac.jp/crid/1390853649746833792

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