がん免疫療法コラム

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子宮がん肉腫における抗HER療法の有効性

子宮がん肉腫は稀な疾患

肉腫は、全身の骨や筋肉、脂肪、神経など臓器以外から発生する悪性腫瘍のことです。

「希少がん」の一つであり、すべてのがんのうち約1%を占めるとされています。

子宮がん肉腫は、子宮内膜細胞に肉腫が発生している状態でありますが、病理検査をすると臓器(子宮)から発生するがん種成分と筋肉などに発生する肉腫成分が両方、検出されるため、「子宮肉腫」とは異なります。

子宮がん肉腫は、予後不良のがん種であり、適切な治療をしたとしても5年生存率は15〜35%前後と言われています。

また、明らかに有効とされている治療法としても、外科手術による子宮摘出のみとされており、患者にとって精神的、身体的に負担が大きいがんの一つです。

 

トラスツズマブ デルクステカンによる抗HER2療法

トラスツズマブ デルクステカンは、「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳がん、がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治療切除不能な進行・再発の胃がん」に使用されます。

HER2は、細胞の増殖に関わる受容体であり、がん細胞に存在するHER2の働きを抑制することでがん細胞の増殖を抑制できるとされています。

トラスツズマブ デルクステカンは、HER2の働きを抑制するのと同時に、選択的にHER2に関連する遺伝子の働きも抑制する分子標的薬です。

 

子宮がん肉腫に対する抗HER療法の有効性

従来、トラスツズマブ デルクステカンは、既存の治療法で効果がないHER2陽性の乳がん、胃がんに使われる医薬品です。

子宮がん肉腫は、患者数が少なく、治療法についても研究が十分ではありませんでしたが、国内の研究においてトラスツズマブ デルクステカン子宮がん肉腫の治療効果が報告されています。

子宮がん肉腫を高度に発現している患者の54.5%、低発現の患者の70%で腫瘍が30%以上縮小したことが確認されています。

標準的な子宮がん肉腫の治療において、5%の患者にしか30%以上の腫瘍の縮小が認められなかったのに対してトラスツズマブ デルクステカンは、良好な結果だと言えるでしょう。

 

希少がん対する治療法の確立

子宮がん肉腫に対するトラスツズマブ デルクステカンの効果を研究するにあたって、PDXモデルが利用されました。

PDXモデルは、患者の腫瘍組織を免疫不全マウスに移植し、患者の腫瘍組織を増殖させる手法です

人間の腫瘍組織を利用することから、動物実験でありながら抗がん薬の治療効果をより高い精度で予測できる手法として注目されています。

治療が難しかったがんや希少がんであるために研究が進まなかったがんについても、新しい研究法が開発されることで、治療ができる未来が来るかもしれません。

 

参考URL

Trastuzumab Deruxtecan for Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Expressing Advanced or Recurrent Uterine Carcinosarcoma (NCCH1615): The STATICE Trial

https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.22.02558

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