がん免疫療法コラム
先進医療とがん治療
先進医療は公的医療の対象になるかもしれない治療法
公的医療保険は、国民が安全かつ治療効果が科学的に証明されている治療法が対象となっています。しかし、医療技術は、日々進化しており、公的医療保険の対象となる治療法も常に見直しが必要です。「先進医療」は、公的医療保険の対象とするか評価している治療法であり、厚生労働大臣が定める「評価療養」の一つとされています。
一定の有用性と安全性が認められていることから、公的医療保険の対象となっている治療法と併用することも可能です。
がん治療にも先進医療が存在する
先進医療の中には、がんに対する治療法も存在します。代表的なものとして、「陽子線治療」や「重粒子線治療」があります。陽子線治療や重粒子線治療は、従来の放射線治療に比べるとがん細胞に対する殺傷性が高く、健康な細胞への影響も少ない治療法とされています。陽子線治療に関しては、治療効果が認められ、平成28年4月に小児がんに対して公的医療保険の対象となっています。
治療法以外にも、「抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査」や「細胞診検体を用いた遺伝子検査」などがんの検査方法についても先進医療が存在します。先進医療に分類される検査方法は、抗がん剤の使用に対する副作用を減らしたり、検査による苦痛を軽減したりするので、がん治療の効率性を向上させる可能性があります。
先進医療の費用は全額自己負担
公的医療保険の対象となる治療法については、医療費の一部以外は保険で支払われますが、先進医療については全額自己負担する必要があります。そのため、先進医療を選択する場合、経済的負担が大きくなるので注意が必要です。
代表的な先進医療である陽子線治療や重粒子線治療についても、費用が約300万円もかかります。
しかし、公的医療保険の対象となっているがんの標準治療についても、安全性と有効性が認められているため、経済的に先進医療を受けられなかったとしても悲観する必要はありません。
例えば、がん免疫療法で使用される免疫チェックポイント阻害薬は、ある種のがんに対して治療効果が証明されている薬剤ですが、非常に高額です。しかし、公的医療保険の対象となっているため、高額療養費制度と合わせると負担額は少額です。
先進医療は、がん治療の選択肢を増やすものであり、治療効果が特別に高いということではありません。
先進医療はがん治療の幅を広げる
がんの治療法は、常に研究、開発が行われており、新しいものが世に出ています。ある程度の安全性と有効性が認められた先進医療は、標準治療では治療が難しいがんに対しても治療効果が見込める可能性があります。先進医療は、標準治療と並行して受けられるので、がん治療の選択肢を増やせるメリットがあります。
参考URL
先進医療の概要について,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html
先進医療の各技術の概要,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html
小児・AYA世代の腫瘍に対する陽子線治療診療ガイドライン2019年版,公益社団法人日本放射線腫瘍学会,一般社団法人日本小児血液・がん学会
https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/guideline/aya_gl2019.pdf