がん免疫療法コラム

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がんの遺伝子治療の現状

正常の遺伝子を細胞に導入する治療

細胞の核に存在する遺伝子には、DNAやRNAなど人体を構成する設計図が入っています。特定の遺伝子が欠損したり、逆に発現したりすることで、がんや遺伝性疾患の原因となることがあります。

遺伝子治療は、遺伝子や遺伝子を導入した細胞を人の中に投与することで、遺伝子を原因とする病気にアプローチできる治療法です。

遺伝子治療の方法として、細胞の遺伝子に遺伝子を組み込む働きをもつウイルスベクターを利用する「体内遺伝子治療」と事前に遺伝子を導入した細胞を体内に移植する「体外遺伝子治療」が存在します。

世界で初めての遺伝子治療は、1990年にアメリカで行われたADA欠損症の遺伝子治療です。1995年に日本でも遺伝子治療が行われ、現在では、脊髄性筋萎縮症や白血病などに適応をもつ遺伝子治療薬が承認されています。

 

遺伝子治療の多くはがんを対象としている

世界で行われる遺伝子治療の臨床試験は、2/3ががんを対象としており、遺伝子欠損を対象とした試験が1割にとどまっています。

日本では、人生を通じて2人に1人ががんを発症するとも言われ、多くの人ががんに関係する時代となりました。

また、近年、話題になった新型コロナウイルスワクチンにも、ウイルスベクターやプラスミドベクターなど遺伝子治療の技術が応用されており、感染症のワクチン開発にも遺伝子治療が影響しています。

そのため、従来は、一部の遺伝病患者を対象としていた遺伝子治療は、がんや感染症のワクチンなど多くの人にも関係するものとなっています。

 

治療効果のなかったがんにも効く可能性がある

がんの治療は、外科手術、放射線治療、薬物療法が主軸となっています。

従来のがんは、がん細胞を障害したり、がん細胞を除去したりすることで治療していきますが、遺伝子治療は、がんを発症させる遺伝子を不活化することでがんを予防したり、がん細胞に必要な物質の生成を抑えたりすることで、がんに対してアプローチします。

遺伝子治療は、従来の抗がん剤などの治療とはがんに対する働き方が異なるため、抗がん剤に対して反応が薄かったがんに対しても効果があらわれる可能性があります。

 

日本での遺伝子治療研究は発展途上にある

現在、日本の遺伝子治療の臨床試験数は、諸外国に比べると少なく、世界全体の1.6%を占めています。

また、欧米で承認された日本製のものは存在しておらず、遺伝子治療の開発が遅れているのが現状です。

世界的には、遺伝子治療の成功例が報告され、治療が難しかった白血病や脊髄性筋萎縮症などの疾患に対して治療効果が認められています。

日本でも遺伝子治療の研究、開発環境が整えられるようになり、遺伝子治療の開発が進むことが期待されています。

 

参考文献

日本の遺伝子治療の課題,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/2r98520000033pt6.pdf

遺伝子治療分野における研究開発の状況と課題について,日本遺伝子細胞治療学会
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/saisei_saibou_idensi/dai3/siryou1-2.pdf

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