がん免疫療法コラム
癌の骨転移について1
はじめに
骨転移(骨メタ)という言葉を聞いたことはありますでしょうか?実は骨は肺や肝とともに癌転移を来しやすい臓器と言われています。
がんの骨転移は正確には「転移性骨腫瘍」と呼ばれ、骨を形成する細胞から発生する「原発性骨腫瘍」(例えば、骨肉腫、ユーイング肉腫、骨髄腫など)とは区別されています。
骨転移の頻度
骨転移は全ての進行がんに発生する可能性があります。中でも前立腺がん、乳がん、肺がんでは約30-90%に骨転移が好発します。特に乳がんの術後10年以上経っても骨に転移することがあります。さらに腎細胞がん、甲状腺がん、多発性骨髄腫なども骨転移の多いがん腫と言われています。
2010~2016年の米国のデータベース研究では約250万人のがん患者のうち11万人(4.6%)に骨転移を認めました。また、デンマークの研究でも10大がんの7.5%に骨転移が認めたという報告もあります。本邦では正確な実数は把握されていませんが、国内でも年間数万人の患者がいると見積もられています。
骨転移の症状
骨転移の症状は疼痛、病的骨折、麻痺(神経障害)などがあります。病的骨折とは日常のなにげない動作で骨折してしまうことを指します。これらは直接的に命を脅かすものではありませんが、ADLやQOLの低下、引いては予後の悪化に繋がることがわかっています。
また、骨が破壊された結果、骨のカルシウムが血液の中に放出されて、血中カルシウム濃度が高くなることも知られています。その結果、便秘、吐気、口渇感、食欲不振などの症状が出現することもあります。
骨転移の部位
骨転移はどの骨にも起きる危険性がありますが、骨転移が起こりやすい場所はがん種によって異なります。
がん細胞が最初に発生した場所の近くの骨や、体の中心部に近い骨(脊椎、肋骨、骨盤、大腿骨、上腕骨など)に起こりやすいことがわかっています。
肺がんや腎がんなど一部のがんでは、体幹だけでなく末梢にも転移しやすいことが知られています。
骨転移の診断
診断はがん腫別発生頻度、症状をもとに、骨転移が疑われる場合はMRI、骨シンチグラフィー、CT、PET-CTなどの画像診断で確定診断を行います。
骨シンチグラフィーでは、骨以外の全身への転移を早期検知できるとされていますが、疑陽性また疑陰性となることにも注意が必要です。
今回はがんの骨転移の概要について解説しました。次回に骨転移のメカニズム・治療について詳しく解説していきます。
出典:Jpn J Cancer Chemother 50(3):283-286, March, 2023